The Time Walkers 7 高杉晋作
伊藤博文友情客串……
1.オープニング
過去から未来へ、連綿と続く時の流れにおいて、偉人と呼ばれる歴史に残る出来事を成し遂げる人物が現れます。彼らの決断の裏側には何があったのか。これは偶然のいたずらから、時の狭間に迷い込んだ者たちの物語。そして、運命に翻弄された者たちの物語。その扉を開く時の散歩者があなたを知られざる歴史の裏側にご案内することになりましょう。
序幕
从过去到未来,在连绵不断的时间长河中,不断出现完成永载史册的丰功大业的伟人。在他们的决断的背后隐藏着什么呢。这是关于因为偶然的恶作剧而迷失在时空夹缝中的人们的故事。同时,也是被命运玩弄的人们的故事。打开这扇时空之门,让时空的散步者来引领你走向不为人知的历史另一面吧。
2.夜襲
夜の瀬戸内海、大島の沖合いに停泊する幕府の軍艦の灯火だけが、闇の中で空の星のように浮かび上がって見える。どうやら船を動かす蒸気機関の火が消え、兵員たちもすっかり眠りの落ちているようだ。昼間の勝利の余韻に浸って、すっかり油断しきっているのだろう。最高だ。ぞくぞくするね。
ゆっくりと敵船に近づく丙寅丸の船上で、俺は思わず笑みを浮かべた。
このまま夜襲をかければ間違いなく勝てる。だが、この好機を見過ごせば、果たして歴史は大きく変わるだろうか。それとも。いま、俺は明らかに運命の分かれ道に立っていた。
慶応2年6月、太平の眠りを覚ます黒船の来航から10年あまり、攘夷派の急先鋒として公然と倒幕と唱える長州藩は、江戸幕府によって攻撃は受けていた。後世に第二次長州征伐とも四境戦争とも呼ばれる戦いだ。そして、15万もの兵力を動員した幕府軍が、最新鋭の軍船4隻を派遣し、瀬戸内海に浮かぶ大島を占領させたのがつい昨日のこと。そこを足掛かりに幕府は一気に長州藩の拠点である周防へと攻め込もうというのだ。そうなれば、四方から幕府軍に攻められている長州藩は確実に負ける。だが、本当にそうなのだろうか。
「あの、なぜそのような軽装で、高杉さんはわれらの大将です、もう少し威厳というものをお考えになられては」
と、着流しに扇子一本を持っただけという俺の恰好が気になったのか、副官の一人が声をかけてきた。
「威厳か、俺たちは必ず勝つ、恰好などこれで十分さ」
そう、今度の夜襲は成功し、長州は必ず幕府軍に勝つ。そして、江戸幕府はいずれ大政奉還によって終焉を迎え、日本は明治政府が行う改革によって西洋のような近代国家となっていくだろう。俺にはそこまで未来が分かっていた。なぜなら、それこそが俺の知っている正しい歴史の流れなのだから。それでも、もし海軍総督である俺がわざと負けるように指揮をとったら、果たしてその決断で歴史は変わるのだろうか。それとも、やはり歴史という大きな流れの中で簡単に修正されてしまうのだろうか。
「それもまた面白い」
思わずそんなつぶやきが漏れた。かつての俺の人生と比べたら、なんとスリルのある人生なのだろう。俺がこの時代で高杉晋作として生きる前、150年先の日本で生きていたあの頃と比べて。
夜袭
夜晚的濑户内海,大岛的海面上,只有停泊着的幕府军舰的灯火,仿佛黑暗中的星星一般发出闪闪亮光。看起来,船上的蒸汽机关的火都已经熄灭了,士兵们也都进入了梦想。大概是人们还沉浸在白天胜利的喜悦中,所以完全放松了警惕吧。太好了。好兴奋啊。
我站在慢慢接近敌船的丙寅丸上,忍不出浮现出一丝笑容。
如果现在进行夜袭的话一定会赢。但是,如果我放弃了这个绝好机会的话,历史会不会发生巨大的变动呢。到底会怎样呢。现在,我正站在命运的分岔路上。
庆应2年6月,黑船的来航导致日本从太平的美梦中苏醒,距今已经十多年了。作为攘夷派的急先锋更公然宣称打倒幕府的长州藩,遭到了江户幕府的攻击。这边是被后世称为第二次长州征伐,同时也被称为四境战争的战事。然后,动员了15万兵力的幕府军队,派遣了四艘最先进的军舰,终于在昨天占领了濑户内海中的大岛。因此为契机,幕府准备大举攻入长州藩的据点周防。如果这样的话,被幕府军队四面围击的长州藩一定会输。但是,真的会这样吗。
“您为何一身轻装打扮。高杉先生您使我们的大将,您应该在考虑一下应该具备的威严。”
也许是太过于介意我身穿一件简单的和服,手拿扇子的打扮了。副官中的一个人开口说道。
“威严吗?我们一定会赢的。这样的打扮就足够了。”
是啊,这次的夜袭成功的话,长州一定会战胜幕府军队。然后,江户幕府早晚会将大政奉还,迎来自己的终结。日本也会因为明治政府执行的改革,而成为和西洋的近代国家一样吧。我对于这些未来十分清楚,因为,这才是我所知道的真正的历史走向。可即使如此,如果身为海军总督的我故意做出会战败的指挥的话,我的决定,能对历史带来多少改变呢。还是说,在历史这巨大的洪流中被简单的修正呢。
“有意思。”
想到这里,我禁不住呢喃道。我和曾经的人生比起来,这将是多么刺激的人生啊。在我来到这个世界成为高杉晋作之前,和我生活在150年前的日本那个时候比较起来的话。
3.退屈な人生
人間は先が見えないことに不安を感じ、常に安心を求めて生きるという。だが、どういうわけか俺は昔から違った。どんな安定を手にいれようと、その日常に慣れてしまうといつの間にか、その生活のすべてを破壊したくなってしまうのだ。自分で言うのもおこがましいが、頭の回転が速く、物事の先が見えすぎて、飽きっぽい性分に育ったためか、それとも反抗心が旺盛で、何かのルールに縛られることを嫌っていたからか。父親が銀行員で、母親が名家の出という裕福な家庭に育ち。幼い頃からエリート教育を受けさせられた俺は、学業優秀、運動神経も抜群と、親の望み通りの子供として育った。
「自分たちの敷いたレールに乗っていれば、お前は幸せになれる」
両親は本気でそう信じていた。そんな考えにあのまま順応できていれば、もしかすると俺は平凡な社会生活を送っていたかもしれない。しかし、中学に進んだ頃から、俺はただ決められた物事を凝らしていく生活に強烈に退屈さを感じるようになっていた。そして、高校を卒業とするすぐに、自分と同じ道を歩ませようとする両親に反発し、勘当同然に家を出た。
何にも縛られることなく、とにかくおもしろおかしく人生を生きてやる。家を飛び出した俺はそう決心していた。将来のリスクを計算し、それを避けるために保険をかける。それが人生だと考えている両親への反発もあった。その後は友人のもとに転がり込んで、ベンチャー企業を立ち上がったり、わざと海外の危険地帯で放浪生活を行ったりなど、ひたすら刺激を求める生活を送り続けた。さらに日常生活でも刺激となるものなら犯罪にならない限り、どんなものであろうと手を出した。そんな破滅的とも思える俺の生き方を見て、苦労知らずで自分によっているだけだというやつもいたが。他人の誹りはまったく気にならなかった。俺はただ生きることが退屈という思いを捨てきれず、常に刺激がないと、生きていると実感できなかったのだ。だが結局、何をしても、その憂鬱が晴れることはなかった。仕事は成功が見えた時点で、冒険はゴールが近づいたとたんに、どれもそれまで気づいたものをあっさり捨て去ってしまった。どんなに情熱を持って取り込んで見ても、どれも先が見えた時点で虚しさを感じるようになってしまうのだ。
「本当に退屈だよ、人生ってもんは」
いつしかそれが俺の口癖になっていた。そんな時だ。俺があの奇妙な老人に遭遇したのは。
无聊的人生
人们总是对无法预见的未来感到不安,在生活中寻求着安心。但是,不知什么原因,我一直都与众不同。不管现在的生活是多么的安稳,只要习惯了这种生活以后,便渐渐想要将一切全部都破坏掉。虽然由自己来说有些厚颜无耻,但是我头脑灵活,总是能迅速看到事情的发展走向,因此便养成了容易厌倦的性格吧,还是因为反抗心理旺盛,不愿意被规则所束缚呢。我成长在一个富足的家庭中,父亲是银行职员,母亲是名门出身。从小就接受着精英教育,学业优秀,运动神经出众,父母按照他们的希望来培养我。
“如果你按照我们为你铺好的路走下去的话,一定会幸福的。”
父母真心这样相信着。如果我按照这样的想法生活下去的话,说不定,我也能过上平凡的生活。但是,升入初中开始,我对于这种已经被决定好的生活,感到了强烈的厌烦。然后,高中毕业后,对于父母想让我走上和他们一样的道路,我开始反抗,索性与家人断绝关系,离家出走。
总之,我要过上不受任何约束,又有趣的人生。离开家的我下定了决心。这同样也是对父母的一种反抗,他们眼中的人生,便是计算着将来会发生怎样的危险,如何规避危险。之后,我来到朋友家,开始建立新型风险企业,故意到海外的危险地带流浪,我只是为了寻求刺激而活着。而且,在日常生活中,能够给我带来刺激的东西,只要不违法,我都会尝试。有的人看到我这种近乎于自我毁灭的生活方式,会觉得我是不知道人世疾苦,只知道享受的人吧。他人的冷言冷语,我全然不放在心上。我只不过觉得活着太过于无聊了,如果不经常刺激自己的话,就几乎感受不到自己还活着。但是,不管做什么,我心中的抑郁却无法消散。在事业快要成功的时候,在冒险接近终点的时候,所有的事情,在我能预测到结果的时候,我都会彻底放弃。不管我曾经投入了怎样的热情,只要我能够看到结局的时候,我便会感到无尽的空虚。
“人生,真是太无聊了。”
不知何时,这句话成了我的口头禅。我就是在这个时候,和那个奇妙的老人相遇的。
4.黒衣の老人
何か新な刺激に出会うことを期待して、日本各地を旅することにした俺は、その日山口県の萩の町へと来ていた。江戸時代長州藩の藩士が暮らしていた萩は、当時の古い町並みが残された静かな町だ。そんなことを蝉の鳴き声に囲まれながら、目的もなく歩いていた俺はふと前方を歩く奇妙な老人に気づいた。
その老人は真夏にも関わらず黒のコートに黒の帽子という姿だった。それ以上に妙だったのは俺以外の人間が誰もそのことに気を留めず、また老人の周囲がまるで陽炎のように歪んだ見えたことだ。俺は信じにそこが追い求める面白いことがあるのを感じ取った。老人はそれだけ異質で、現実とかき離れて見えたのだ。気づくと、俺は引き寄せられるように老人の後を追っていた。土塀に囲まれた城下町の風情を残す路地を歩き、やがてたどり着いたのは高杉晋作生誕の地、と記された石碑の立つ一軒の古い武家屋敷の前だった。
「高杉晋作」
それは150年前に起こった明治維新の立役者の一人であり、長州藩が幕府の攻撃で存亡の危機に瀕した時に、彼の創設した奇兵隊とともに、そのピンチを救った人物の生家だった。老人の目的はこの屋敷を訪れることだったのだろうか。拍子抜けしながら、俺が見守っていると、門扉が閉まっているにもかかわらず、老人は屋敷の前へゆっくりと歩みを進めていくではないか。その瞬間だった。そこに忽然と光が放つ扉が現れたのだ。
「あんた、いったい」
あまりにも不可解な情景に思わず、声を上げてしまい、老人がこちらを振り返る。刹那、鋭い眼光に吸い込まれてもしたかのように、俺は意識を失っていた。
黑衣老人
我期待着能遇到什么新的刺激,便踏上了周游日本的旅程。那天,我来到山口县的萩市。江户时代,长州藩的藩士们生活过的萩市,当时的古老街道仍保留着,是个非常宁静的城市。在四周不断响起的蝉鸣声中,我漫无目的的走着,突然,我注意到前面有一个奇怪的老人。
那个老人,在这盛夏时节,还穿着黑色的外套,戴着黑色的帽子。更奇怪的是,除了我以外似乎没有任何人注意到他。而且,老人的周围仿佛升腾的热浪般,产生了扭曲。我相信那里有我追求的乐趣。老人是那么的特殊,感觉仿佛不属于这个现实。等我回过神来,我已经跟着老人追了过去,仿佛被什么牵引着一般。我走在在土墙环绕着的仍保留着城下町风情的街道上,最后来到的地方是一家古老的武士宅邸,房屋前的石碑上刻着 高杉晋作出生地。
“高杉晋作?”
他是发生在150年前的明治维新的重要角色,长州藩在幕府的攻击下面临存亡危机的罐头,他组织的奇兵队,解救了长州藩的危机。这里便是他的出生地。老人的目的似乎就是这座屋子吧。我有些失望的继续看着他,虽然大门紧闭,但是老人还是慢慢的继续向房屋走去。就在那一瞬间,突然出现了一扇闪光的门。
“你到底是”
面对着无法理解的情景,我忍不住叫出了声,老人回头看了看我。刹那间,我仿佛被他锐利的眼光吸进去一半,失去了意识。
5.幕末へ
目を開けると、俺はなぜか畳敷きの部屋に倒れていた。ふすまと障子戸に囲まれ、天井に梁のある古い日本家屋の一室だ。しかもいつの間に着替えさせられたのか、服が着流しへと変わっているのではないか。
「何が起こった」
なんとか思い出そうとするものの、記憶が混乱しているのか、思考が定まらない。と、俺はさらなる異変に気付いた。逞しい腕に鍛え貫かれた体。見知ったはずの自分の体つきが、まるで別人のものに思えるのだ。まさかあの老人に幻覚でも見せられているのだろうか。その時だ。
「晋作さん、よろしいでしょうか」
障子戸の向こうからこちらに呼びかける声が聞こえた。
「晋作さん?」訝しがりながらも、障子を開けると、俺は一瞬その場に立ち尽くしてしまった。そこに立っていたのは、羽織袴を着て、髷を結った侍姿の若者だったのだ。
「晋作さん、藩主様がお呼びです、急ぎ搭乗の支度をなさってください」
そう言ってこちらを見る若者は、格好といい、言葉使いといい、とても現代人には思えなかった。しかも自分は長州藩の殿様の使者で、俺を迎えにきたのだという。何より驚いたのはどうやら俺のことをあの高杉晋作と信じきっているらしい態度だ。まさか高杉晋作の生家を見たために、こんな奇妙な夢を見ているのだろうか。だが夢と判断するには、すべてがあまりにもリアルだった。まあいい、思わず笑みが浮かぶ、俺は逆にこの時代に興味を持た。夢であれ、現実であれ、どちらにしても面白い。こうなったら、最後まで流れに乗るまでだ。
「分かった、すぐに支度する、ただ、その前に少し聞きたいことがあるんだが」
搭乗の準備をしようと背を向けながら、俺は使者の若者に声をかけた。羽織袴に着替えながら、俺は晋作とは知己の間柄らしいその若者、伊藤俊輔から藩主に呼び出された理由を聞き出していた。
彼の話によると、攘夷倒幕を標榜する長州藩はその意思を天下に示そうと、外国商船に攻撃をくわえたものの、逆に同盟を組んだ欧米四か国の艦隊から反撃を受け、存亡の危機に立たされているらしい。そのためかつて上海に渡った経験があり、奇兵隊の創設という実績もある晋作が、講和条約を結ぶ全権大使として選ばれたのだという。
「夢でないとすれば、ずいぶんと面白いことになってきたもんだ」
詳しい話を聞かされながら、俺は刺激を求める己の性(さが)が呼び覚まされるのを感じていた。そして支度を終えて、迎えの籠を乗ろうと門を出たところで、俺は再びその場を立ち尽くしてしまった。
「これは…」
屋敷の門構えは意識を失う前に見た晋作の生家のものと同じだったが、目の前に広がる風景は、明らかに記憶の中のものとは異なっていた。あったはずのコンクリート造りの建物や舗装された道路はすべて姿を消し、そこには百年以上前の木造の家屋が立ち並ぶ、古い日本の町並みが広がっていたのだ。どう考えてもセットには見えない。こうなると理屈は分からないが、俺は本当に幕末の長州藩士、高杉晋作になってしまったと考えるしかないようだ。
「本当におもしろいじゃないか、わくわくしてきやがる」
ありえない光景を前に、俺は戸惑いより先に武者震いを感じていた。幕末の日本で歴史上の人物である高杉晋作として生きる。これ以上の幸運があるだろうか。まさに俺の追い求めていたおもしろおかしく刺激に満ちた人生だ。そうやって腹を潜ると俺は迎えの籠に乗り込み、藩主の待つ、山口の政治堂へと向かった。
来到幕末时代
睁开眼睛,不知为何我发现自己倒在一件铺着榻榻米的房间里。这是一间周围全是拉门和拉窗,房顶上有横梁的古旧的日式房屋。而且不知何时我的衣服居然被换了,我身上穿着的是简便的和服。
“发生了什么?”
我想努力回忆起发生了什么,但是记忆非常混乱,我没办法思考。这是,我注意到一些更奇怪的事情。那就是我粗壮的手臂和经过历练的身体。我自己的身体仿佛完全变成了别人的身体一样。难道,是那个老人制造的幻觉吗。就在这时。
“晋作先生,我可以进来吗?”
拉门外忽然传来了声音。
“晋作先生?”我心怀疑问地打开了拉门,那一瞬,我呆立当场。站在那里的,是一名穿着羽织袴和服,梳着发髻的武士打扮的年轻人。
“晋作先生,藩主有请,请您尽快准备出门吧。”
年轻人一边说着,一边看着我,无论是他的打扮,还是他的话语,都让人无法相信他是现代人。而且,他还说自己是长州藩藩主的使者,是来接我的。更让我吃惊的是,他的态度简直就是把我当成了那个高杉晋作。难道,我因为看到了高杉晋作的故居所以才做了这个奇怪的梦吗。可,如果我是在做梦的话,这一切都太过于真实了。算了,我忍不住笑了一下,我对这个时代有兴趣。不管是做梦,还是现实,都很有趣。就让的话,就让我顺其自然吧。
“明白了,我马上就准备。但是,我还有点事情想问一下。”
我一边背过身去进行外出的准备,一边向使者问道。在我换穿衣服的时候,我从这名似乎同晋作早就相识的年轻人伊藤俊辅那里问出了藩主想见我的原因。
按他所说的,提倡攘夷倒幕的长州藩,为了向天下昭显自己的主张,对外国的舰队发起了攻击,但是却遭到组成同盟的欧美四国的舰队反击,面临着生死存亡的危机。因此,他们想请曾经到过上海,并创立了奇兵队的晋作出面作为全权大使缔结和平条约。
“如果不是在做梦的话,还真是变得有意思了呢。”
一边询问着详细的内容,我同时感到自己体内寻求刺激的本性苏醒了。做好准备之后,我向门外的轿子走了过去,我再次被眼前的景象震惊了。
房屋的建筑和我失去意识前看到的金做的故居一样,但是我眼前的风景却和记忆中的大相径庭。原本的混凝土建筑,柏油马路全都不见了,取而代之的是一百年以前的木造房屋林立的古代日本街道。怎么想都不可能。事到如今,虽然不知道是什么原因,但是我似乎是真的来到幕末年代成了长州藩士高杉晋作。
“太有趣了,好激动啊。”
面对这不可能的情景,我最先感受到的不是困惑,反而是激动。在幕末年间的日本,成为历史上有名的高杉晋作。还有比这更幸运的事情吗。这正是我所追求的充满趣味和刺激的人生啊。我下定决心之后,坐上了迎接我的轿子。前往藩主所在的山口政治堂。
6.和平交渉
数週間後、俺は欧米四か国軍の旗艦であるイギリス船、ユリアラス号の上にいた。長州藩の藩主毛利敬親から代表の任を抱かされ、講和条約を結ぶ会談を行うためだ。長烏帽子に派手な陣羽織と、この時代でも些かいき過ぎでも思える恰好で、交渉の場を挑んだ俺は、立ち並ぶ異国の連中を睨みつけた。幸いなことに、この体には俺が入り込むまでの高杉晋作の記憶や知識が残されており、藩主の敬親と面会し、この会談の段取りを決めるまで、さほど時間はかからなかった。晋作としての知識を総動員した俺は、敬親を説き伏せ、和平にこぎつけたならば、攘夷の矛先をいったん収め、外国と取引するという約束を取り付けていた。それによって、いずれ攻め寄せてくる幕府に対抗する武器や軍船を手に入れる算段だ。幕府と外国勢の双方を敵に回した状況を打開するには、それしか策はなかった。そのためにも、この交渉を失敗に終わらせるわけにはいかない。
「それでは高杉さん、話し合いを始めましょうか」
欧米側の通訳が司令官の言葉を伝え会談が始まった。だが、4か国側が出した条件の中で、どうしても承諾できない要求があった。瀬戸内海に浮かぶ彦島を中国の上海や香港のように租借地として英国に譲るようにというのだ。この条件に応じれば、もしかするとそこを足掛かりに、いずれ近隣の港でなる、下関や三田尻もその勢力圏に納められてしまうかもしれない。それは到底、長州にとって承服できる要求ではなかった。
「承知できぬ」
そう言ってすくっと立ち上がると、続いて俺は歌でも吟じるように言葉を放った。
「そもそも日本国は、高天原より始まったもの、初めに国之常立神がましまし、続いて伊邪那岐、伊邪那美なる、2柱の神が現れ、天の浮橋に立ちたまいて、天の沼矛を持って、海を探り、而して、その矛の先より滴る雫が」
そのまま日本の国とはいかなる成り立ちなのかと、事細かに唱え続ける俺に、4か国の代表たちは唖然とした表情を浮かべる。長州側の通訳として同席した伊藤俊輔やほかの重臣たちも同じく目を丸くしていた。もしかすると、気でも違ったかと思われているかもしれない。だが、これは考え抜いた末の作戦だった。どうしても譲歩できない以上、ひたすら時間を稼ぐしかない。相手が折れるか、こちらの体力が尽きるまで、俺はこの猿芝居を続けるつもりだった。どの道、失うものなど俺にはないのだ。しかし、思ったより早く通訳が俺の言葉に待ったをかけだ。
「ストップ!もう充分です、高杉さん、司令長官のミスタークーパーは租借地の件を外して、外国船に下関海峡の通航を許可するという条件のみで構わないと言っています」
その申し出は長州が今度の交渉を無事に乗り切ったことを示していた。こうして歴史通り、欧米4か国と長州藩との講和条約は無事に締結されたのだった。
和平交涉
数周之后,我来到欧美四国联军的旗舰,英国舰队的尤里亚勒斯号上。这是因为长州藩的藩主毛利敬亲让我作为代表,进行缔结和平条约的会谈。我头戴很长的乌帽子,身穿阵羽织,这身打扮即使在这个时代也有些夸张,冷眼看着那些异国人士。幸运的是,在我进入这个身体之前的高杉晋作的知识和记忆都保留着,我和藩主敬亲会面,到决定进行会谈并没有花费多少时间。我运用晋作的知识说服了敬亲,如果想要争取和平的话,必须先要暂停攘夷,和外国进行交易。并通过这种方法得到对抗幕府的武器和军船。如果想要改变现在这种被幕府和外国两面夹击的状况,只有这一个办法。因此,这场交涉不能失败。
“那么,高杉先生,开始谈判吧。”
欧美方面的翻译传达了司令官的话语,会谈开始了。但是,在四国给出的条件中,有一个无论如何都不能答应的条件。那就是将濑户内海中的彦岛,像中国的上海,香港一样作为租借地转让给英国。如果答应了这个条件,那么就有可能以此为契机,导致邻近的港口下关和三田尻也早晚被划入他们的势力范围。这是对于长州来说无论如何不能让步的。
“我不能答应。”
我说完便站了起来。接着我像唱歌一般说道。
“日本国始于高天原,最初有了国之常立神,接着有了伊邪那岐、伊邪那美二神。二神立于天浮桥上,执天沼矛搅动大海,而矛尖垂落之滴露……”
我便这样,开始详细地讲述起日本的古代传说,四国的代表都浮现出了茫然的表情。长州的翻译伊藤俊辅和其他的重臣也都瞪圆了眼睛。他们大概认为我疯了吧。但是,这确实我深思熟虑过后的方案。既然无论如何都不能让步,那就只有尽量拖延时间了。到底是对方先屈服,还是我先累趴下呢,无论如何我都要把这场猴戏演到底了。反正我没有什么可以失去的。但是,事情发展的比我想象的要快,翻译开口让我停下了。
“好了,已经够了。高杉先生。司令官库珀先生同意,去除租借地的条款,只要允许下关海峡对外国船只通航就可以了。”
这意味着长州顺利完成了这次交涉。就这样如史实所记载的,欧美四国同长州顺利缔结和平条约。
7.革命児
「いや、さすが高杉さんだったよ、高杉さんが口上を述べ始めた時の連中の顔、見せてやりたかったなぁ」
交渉を終えた夜、馴染みの妓楼で祝杯を挙げながら、伊藤俊輔は知己の藩士たちに向かって、相手の要求を屈することのなかった俺の度胸を仕切りと褒め称えた。実際、交渉は大成功だった。懸案だった賠償金の支払いも長州はかつて幕府が出した外国船打ち払いの例に従ってだけだと言い逃れ、請求先は幕府にということで、すでに話がつき、藩にとって実質的に損害と言えるものは何もなかったのだ。
「だが、問題はほかにも山積みだ」
浮かぬ顔で同席していた井上門太が告げた。確かに門太の言葉どおり、4か国同盟軍との和平交渉は成功したものの今の長州藩が危機的な状況にあることに変わりはない。諸外国の軍に敗北を期した以外にも、京都では過激な攘夷派の暴走により、長州藩に同乗する公家たちが追放され、多数の志士たちが討死。さらに、幕府により長州征伐によって、久坂玄瑞という有能な人物たちも戦死し、藩内の権力は攘夷派の手から一気に幕府に従うべきと唱える恭順派のもとへ移っていた。
「まずは藩政を恭順派から再び攘夷派の手に取り戻す必要がありますね、それが成功しない限り、長州藩が再び倒幕運動の中心になることは難しいでしょう」
「それはそうだが、まずは藩主様に腹を決めていただければ」
俊輔の言葉に門太は応じ、たちまち若い二人の間で議論が始まる。のんびりと三味線をかき鳴らしながら、その様子を見ていた俺は思わず嘆息した。
「やれやれ、また始まった」
彼ら長州の若者たちは、断るごとに議論をぶつけ合っていた。恐れくそれだけ本気でこの国の行く末を案じ、現状を憂いているのだろう。実際ここまで何かに熱くなれる彼らの姿は、いつも世の中に退屈していた俺にとって、どこかまぶしくも思える。だが今は理屈をくどくどと述べている時ではないはずだ。
「くだらねぇな」
三味線をかき鳴らしていた手を止め、そう告げた俺に、俊輔たちは驚きの声を上げた。
「ちょっと待ってください、晋作さん。くだらないって、どういう意味です」
「どうもねぇよ。四角四面の議論なんぞほっとけ。攘夷だ開国だって、てめぇら、そんな自分の中だけの考えに縛られてどうする。どうせ一度きりの人生だ、そんな縛りなんか、忘れちまえばいんだよ」
俺に言わせれば、今は論理よりも、実践が必要とされる時なのだ。なにかひとつ行動を起こすためにも理屈を必要としているような場合じゃない。もっともそう思うのもおもしろおかしく人生を生きることを目的としている俺にとって、彼らの崇高な理念や志も、どこか他人事でしかなかったからかもしれないが。
「ほら、それより人生をもっと楽しめ。それで心中の熱をより燃えたぎらせろ。それ以外、ほかに何がいるってんだ」
そういうと、納得のいかない表情の志士たちを横目に俺は再び三味線をかき鳴らし、都々逸を歌い始めた。とにかくこの時代で一暴れして、波乱に満ちた人生を満喫するのだ。江戸幕府を倒した革命児、高杉晋作として。
年が明けて、元治元年1月、情勢を見極めた俺はついに武力決起を決意した。兵を起こして藩政を攘夷派のもとに取り戻すためだ。当初、そんな俺の号令に同調したのは、伊藤俊輔が率いる部隊を含めわずか80名ばかりの兵士たちしかなかった。対する恭順派が動かせる兵は2000名、数の上では到底勝ち目のある戦いではない。だが、俺には勝算があった。もともと藩内のものたちは幕府に対する反抗心が根強く、心情的にも攘夷派が多数を占めている。何か効果的な一押しさえあれば、多数のものがこの決起に賛同するはずなのだ。そして、その一押しのために、俺が恭順派の部隊が動き出す前に長州藩にとって重要拠点だった下関の新地会所を素早く制圧し、さらに藩の海の玄関口ともいえる三田尻の海軍局に参加を収めた。すると、経済の要所と海軍の拠点を抑える快進撃は俺の狙え通りそれまで様子をうかがっていた部隊を次々と決起軍に合流させる結果となった。やがて、3000にふくりあがった兵を率いた俺は恭順派の兵と直接対決し、ついにこれに勝利したのだった。それは決起からわずか一つ月の間の出来事だった。
革命家
“哎呀,不愧是高杉先生,真想给你们看看高杉先生演说的时候,那些家伙的表情呀。”
交涉结束的那天晚上,我们来到了常去的那家青楼,伊藤俊辅向关系很好的藩士们,称赞我不向对方的要求屈服的胆魄。实际上,交涉大获成功。成为悬案的赔偿金的支付,因为幕府曾经发出的驱逐外国船只的指示,而得以使长州免于赔偿,将问题转移给幕府政府。对于长州藩来说,没有任何实际的损害。
“但是,问题还是堆积如山啊。”
同席的井上门太面露愁容地说道。确实如门太所说的,和四国同盟军的交涉虽然成功了,但长州藩仍然处于危机之中。除了被诸外国军队打败以外,还有因为在京都发生的过激的攘夷活动,而导致支持长州藩的公家们被赶出政府,众多志士被杀。另外,因为幕府领导的长州征伐中,久坂玄瑞等能臣志士战死,藩内的大权从攘夷派手中,转移到了提倡顺从幕府的恭顺派手中了。
“首先有必要将藩政从恭顺派手中夺回,让攘夷派重新掌权,如果这一点不能成功的话,让长州藩再次成为倒幕运动的重新很难吧。”
“话是这么说,到首先还是要让藩主大人下定决心才行啊。”
门太也赞同着俊辅的话,两个年轻人顿时开始了讨论。在一旁悠闲地弹着三味线的我,看到他们这个样子,忍不出叹了口气。
“哎呀,又要开始了。”
这些长州的年轻人,因为一件事便开始了激烈的讨论。恐怕他们是真心思考着这个国家的将来,忧心着现状吧。实际上,他们这种能因为什么变得专注热情的姿态,在我这个看什么都无聊的人眼中,是那么的耀眼。但是,现在可不是纸上谈兵的时候。
“真无聊啊。”
我停下弹拨三味线,说道。听到我的话,俊辅他们都吃惊的喊道。
“别这么说啊,晋作先生。无聊是指什么意思啊。”
“没什么意思,不要管这些条条框框的理论了。攘夷也好,开国也好,你们不能被自己心中的想法栓死。反正人生只有一次,把这些束缚都扔掉吧。”
让我来说的话,现在是实践重于理论的时代。并不是每一个行动,都需要理论来证明。也许是因为,我的目的只不过是想要过的有趣刺激,因此他们那些崇高的理念,决心,在我听来完全没有一点意义。
“好啦,最重要的是要享受人生。这样才能燃起心中炙热的火焰。除此以外什么都不需要了。”
说完,我冷眼看着那些一脸不解表情的志士们,再次弹起了三味线,唱起了都都逸。总之我要在这个时代大闹一场,作为打倒江户幕府的革命家,高杉晋作,好好享受一下波澜万丈的人生。
转年,元治元年1月,看清局势的我决定发动武装起义。这时为了举兵将藩政夺回攘夷派的手中。但是,听从我的号令的,只有伊藤俊辅率领的部队中的八十名士兵。与此相对的,恭顺派的兵力则有两千名,从数量上来看,我们是没有胜算的。但是,我觉另有计划,原本藩内的人士就对幕府有很强的反抗心理,在他们心里攘夷派还是占多数的。只要有一个有效的助力推他们一把,就能够让多数人同意起义。因此,为了这个目的,我在恭顺派的军队行动之前,迅速占领了长州藩的重要据点,下关的新地会所,同时,还说服了被誉为长州藩的海上大门的三田尻的海军局参加起义。于是,因为我同时占领了经济要害和海上据点,我的快速围攻,不久就引来了之前一直窥视局面的部队的加入。不久之后,我带领着增加到三千兵力的起义军,同恭顺派的士兵开始了直接对决,并最终赢得了胜利。这时,距离起义开始仅过了一个月。
8.時の散歩者
「次はいよいよ幕府との戦ですね」
恭順派の手から萩を奪還してから数日後、俺はいつもの妓楼の二階で伊藤俊輔と酒を飲みながら今後の情勢について語り合っていた。
「あ、この動きを幕府がほっておくはずがない。」
いずれ幕府が長州へ攻め寄せてくるのは日をみるより明らかだった。そのまえにできる限りの準備を整えておく必要がある。
「さて、どうしたもんかな」
俊輔が帰った後も、俺は一人で三味線を鳴らしながら、来るべき幕府との戦いに向け策を考えていた。日本を支配する幕府にわずか37万ごくの長州藩だけでどう打ち勝つか。俺としては、なんともわくわくしてくる状況だ。と、障子戸の向こうに人の気配を感じ、三味線を弾く手を止める。
「誰だ」
するとふすまが音もなく開き、一人の老人が姿を現した。黒いコートに黒い帽子、それは萩の町で目撃した、あの黒衣の老人だった。
「あんたは、何のようだ。いや、それより何者なんだ」
そう言ってにやりと笑う俺に、老人は重々しい口調で答えた。自分は時の散歩者。時を旅するものなのだと。
「過去と未来、あらゆる時代あらゆる場所を旅してきた、しかし時より移動の際に起こる時空の波に精神を同調させ、巻き込まれるものが現れる。今回のお前さんのようにな」
「え、そいつはびっくりだ」
そういって驚いたふりをみせるものの、老人の話の中身は俺にとってそれほど重要ではなかった。老人の正体が何であれ、俺はすでにこの時代で生きることに決めていたからだ。そして、元の時代へ戻るのだという老人の誘いにも、俺は首を横に振った。
「戻る?冗談だろう」
俺にとって、高杉晋作として生きることは、刺激に満ちた日々を約束してくれるものだ。そんな理想な生活を捨て、わざわざ退屈な現代へと戻るつもりなどあるはずがない。そんな俺に、老人は試すような眼差しを投げると、重々しく口を開いた。
「おまえさんも知っておろう、高杉晋作がどのような最後を遂げるのか」
確かに知っていた、史実どおりならば、晋作は幕府軍との戦闘が続くなか、結核を患い、それから一年も経たずになくなるはずだ。しかし、そんな言葉を鵜呑みにするつもりはなかった。未来なんぞいくらでも変えて見せる。俺は端からそう思っていたのだ。
「無駄じゃよ。歴史は変えられん」
俺の心を見透かしたように老人は言葉を続けた。
「未来から来た人間にとって、過去は夢のようなもの。夢を見ることができても、夢をコントロールすることはできぬのだ」
俺がどう行動しようが意味などない、多少経過が異なるだけで、最終的な歴史の事実は決して変えることはできない。そう語る老人はうそをついているようには思えなかった。だが数年しか生きられないという宣告よりも、自分の行動が歴史をなぞるなぞっているに過ぎないという言葉に俺は強い反発心を覚えていた。
「なるほど、あんたの言うとおりだとしよう、だが、それなら尚のこと戻るつもりはないね」
そう語ると不敵な笑みを浮かべて見せる。これまでずっと、俺は何かに縛られ、他人の手によって敷かれたレールに乗って生きることを拒絶してきた。それが俺の生き方なのだ。その生き方を変えることなど、ありえない。
「俺は歴史を変えて見せる。絶対にだ」
「よかろう。それがおまえさんの選択なら」
そういい残すと障子戸が再び音もなく閉じ、老人は俺の前から姿を消した。
「いいさ、こうなったからには徹底的にやるまでだ」
俺は決意を胸に三味線の弦を一際強くはじいた。
「何かありましたか、先ほどから話し声が聞こえいましたけど」
その音に驚いたのか、奥のふすまが開き、馴染みの芸者のおうのが顔を見せる。
「いや、なんでもない」
そういうと、俺は窓の外から見える夜の闇へと視線を投げた、どんな手を使っても、歴史を変えてみせるという決意を胸にして。
时光的散步者
“接下来终于要和幕府决战了。”
从恭顺派那里夺回萩的几天后,我在经常去的青楼二楼上,一边喝伊藤俊辅喝酒,一边谈论起了今后的形势。
“是啊,这种状况幕府不会放着不管的。”
幕府早晚会攻打长州,这是再明显不过的事了。因此,在那之前,有尽可能做好准备。
“要怎么做才好呢。”
俊辅回去之后,我一个人一边弹着三味线,一边思考着同幕府一战,应该运用什么策略。仅有三十七万人的长州藩,想要对抗支配着整个日本的幕府,怎样才能取胜呢。对我来说,这是多么让人兴奋的状况啊。忽然,我感觉到拉门外有人,便停下了拨动三味线的手。
“谁?”
这时,拉门毫无声响的打开了,一个老人出现在我面前。黑色的外套,黑色的帽子,他就是在萩的街道上看到的那个黑衣老人。
“你有什么事!不,该问你是谁吧。”
我这么说着,冲老人笑了笑。老人则严肃的开口说道。自己是时光的散步者,是在时光中旅行的人。
“从过去到未来,我穿梭于所有的时代,所有的地方。但是,有时有的人会因为移动的时候引发的时空波浪,导致精神一体化,而被卷入其中,就像你这次这样。”
“诶,这还真是不可思议啊。”
我边说着,边做出了吃惊的样子。但是,老人所说的话对我来说并不重要。不管这个老人是什么人,我都已经决定在这个时代生活下去了。因此,面对老人想要带我回到原来时代的邀请,我只是摇了摇头。
“回去,开什么玩笑。”
对我来说,成为高杉晋作,可以保证我每天的生活都充满刺激。我根本不想放弃这种理想的生活,而活到无聊的现代去。老人用试探的眼光看着我,肃然地说道。
“你应该也知道吧,高杉晋作最后的命运是怎样的。”
我确实知道。根据史实记载,晋作在和幕府军的战斗中,患上了肺结核,不到一年便去世了。但是我没打算相信这些。我可以改变未来。我从一开始就这么打算。
“没有用的,历史是无法改变的。”
老人仿佛看穿了我的想法一般,继续说道。
“对于来自未来的人来说,过去就像是一场梦,虽然可以旁观,却无法控制。”
不管我怎么做,都没有任何意义,最多也就是经过有些许不同,最终的历史事实是无法改变的。老人说的这些不像是谎话。但是,比起听到自己只能再活几年的宣告,我的行动只不过是重新描绘历史的轨迹这些话,更是引起了我强烈的抵触情绪。
“原来如此,就算你说的是真的吧,但是,我还是不打算回去。”
说完,我露出了一个无所畏惧的笑容。在此之前,我一直拒绝被束缚着,拒绝沿着他人铺好的轨道生活,这就是我的生活方式。是不可能改变的。
“我一定会改变历史的。”
“好吧,如果这就是你的选择的话。”
老人说完这些话之后,拉门又悄无声息的关上了。老人的身影就这样从我面前消失了。
“好吧,既然如此的话,就干个彻底吧。”
我下定了决心,用力弹拨了一下三味线的弦。
“出了什么事吗,从刚刚开始,我就一直能听到说话的声音。”
也许是被我吓到了吧,里面的拉门突然打开,熟悉的艺人鹈野探出头来。
“什么事都没有。”
我一边说着,一边望向窗外,将目光头像了夜晚的黑暗之中。我下定决心,不管使用什么手段,都要改变历史。
9.歴史への挑戦
「お願いです、晋作さん。もう一度藩政に戻ってください。今がどのような時か、あなたが一番ご存知ではありませんか」
数ヶ月後、俺は下関の宿で伊藤俊輔に詰め寄られていた。俊輔が述べるとおり、世の中では幕府による二回目の長州征伐の気運が高まり、長州も対決にすまえて、全土を挙げて、臨戦態勢に入っている状態だった。
「桂さんが、薩摩との同盟を結んでくれたおかげで、武器に関しては最新のものが揃いつつあります。ですが、それだけでは戦には勝てない。私たちにははやり晋作さんの力が必要なんですよ。」
こちらをまっすぐに見つめ、問い掛ける俊輔の瞳には、真摯な願いが宿っていた。恭順派との戦いの時には圧倒的に不利の状況にありながら、俺を信じて付き従ってくれた俊輔。その言葉に思わず心を動かされる。だが、情に流されるつもりはなかった。黒衣の老人と出会ってから、俺は馴染みの妓楼に入り浸り、ただただ酒を飲み、三味線を弾く毎日を送っていた。史実において、幕府軍を破った立役者である、高杉晋作が何もしなければ、長州藩は幕府軍に破れ、歴史は改変される。そう考えてることだ。もっとも最初からそう考えていたわけではない。何もせずに待つなどというのは、もともと俺の性分ではなかったし、当初は藩の要人の地位を捨て去り、海外に渡ろうとしたり、おうのをつれてあてもなく四国を旅したりと、突拍子もない行動に取ることで、歴史を変えようと心見てみたんだ。しかし、そこからは何の結果も得られなかった。
「分かりません。私には晋作さんが何を考えているのか。なぜこの時になって。もしや何か深いお考えがあるのですか。幕府を打ち破る秘策があって」
必死の形相を訴える俊輔に、俺は違うと首を横に振って見せた。
「俊輔、そもそも俺は壊すのは得意だが、何かを作り上げることは苦手なんだ。」
それだけ告げると、俺は俊輔に帰るように促した。いままで夢見てきたのとは反対に、長州藩が幕府軍に破れることを願うのは本意ではなかったし、当然俊輔たちには申し訳ないという思いもある。だが、すべては俺の行き方を貫くためだ。この時代で生きると決めたのも俺が生きたいように生きられるのを感じたからだし、いまさら、それをまぎることなどできない。
「そうですか。残念です」
だが、うな垂れて帰る俊輔の背中を見送りながら、俺は自分の胸中になにやら気持ちの悪いものを感じていた。
向历史挑战
“求求您了,晋作先生,请再次掌管藩政吧。您应该最清楚现在是什么时候啊。”
几个月之后,我在下关的旅馆里,遭到了伊藤俊辅的质问。就像俊辅所说的,现在幕府发动的第二次长州征伐的势头正劲,长州为对决做好准备,举国上下都进入了临战状态。
“多亏了桂先生让我们和萨摩结成了同盟,因此我们能得到最新式的武器,但是,只有这样我们还是没有胜算,我们还是需要晋作先生您的帮助啊。”
俊辅直视着我的眼神中,包含着真挚的期待。俊辅在同恭顺派一战时,处于绝对不利的状况下,仍然相信我听从我的之后,他的话触动了我的内心。但是,我不能屈服于感情。见过黑衣老人之后,我便每天泡在常去的青楼中,每天每天除了喝酒就是弹三味线。史实中,打败幕府军的重要任务高杉晋作,如果什么都不干的话,长州藩便会输给幕府军,历史会因此改变。我是这么打算的。虽然,这并不是我最初的计划。什么都不做只是等待并不符合我的性格。最开始我打算放弃藩内要人的地位跑去海外,或者带着鹈野漫无目的的到处流浪,我本想尝试通过这种反常的行动来改变历史。但是,却没有得到任何结果。
“我还是不明白。晋作先生您到底在想些什么,为什么要在这种关键时刻。难道说您有什么更深层的考虑吗,有打败幕府的秘密策略?”
面对着俊辅拼命的追问,我摇了摇头告诉他并非如此。
“俊辅,我本来就只擅长破坏,对于创立什么就不擅长了。”
说完这些,我便催促俊辅快点回去。和我之前的梦想相反,长州藩被幕府军打败并非我的本意。当然,对于俊辅等人我也抱有歉意。但是,这一切全都是为了贯彻我的生活方式。我决心在这个时代生活下去,也是因为我感觉到,在这里我可以随心所欲的生活,这一点是无法改变的。
“这样啊,那太遗憾了。”
但是,目送着俊辅垂头丧气离开的背影,在我心中却有一股莫名不安的感觉。
10.長州征伐
幕府軍が長州征伐の号令を出したと知ったのはそれから一ヶ月後のことだった。いつものようにおうのと下関の妓楼を紅屋の二階で酒を飲んでいると、火急の用件と駆け込んできた知己の藩士のひとりが大事になったと告げたのだ。
幕府は切れ者と名高い老中、小笠原長行に全軍の指揮を任せ、およそ15万人にのぼる諸藩の兵が四方から長州に向けて進軍中だという。
いよいよか、ついにその時が来た。一瞬そんな思いが浮かんだ。だが、すぐに俺は自分には関係のないことだと打ち消し、そのまま藩士を帰らせてしまった。
「よろしいのでしょうか。このようなことをしていて」
何事もなかったかのように三味線をかき鳴らし、酒を飲む俺を見て、おうのが心配そうに言った。
「このようなこととはなんだ。俺はおまえと酒を飲めてとても楽しいぞ」
三千世界の鴉を殺し、お主と朝寝がしてみたい。そう都都逸のくだりを口にすると、三味線をかき鳴らし、おどけたように歌ってみせる。そんな俺に対して、おうのはなにやら言いにくそうに晋作さんは変わった気がすると口にした。以前と比べ覇気がなく、何をしていても面白くなさそうだと。
「そんなことはない、なにより今も昔も俺は俺だ。変わったりなどするものか」
そうむきになって否定してはみたものの、俺は内心おうのの鋭さを舌をまいていた。確かに最近の俺は何をしても面白く感じないのだ。この時代に来る前のように。実際、こうやって酒を飲んで、派手に騒いでいても、どこかしこりが残っているように感じてしまう始末だ。
「なぜもっと喜べない。これで俺はあの老人に一泡吹かせてやれるというのに。」
長州藩を率いて、江戸幕府を打ち勝つよりも、目に見えぬ歴史の歯車に挑むほうが遥かに刺激的な挑戦のはずだった。だがそれが達成されようとしても、今の俺はまるでわくわくしていないのだ。
「おうの、もっと人を呼べ!派手に騒ぐぞ!」
おうのに店の者を集めるように告げると、俺はさらに声高々と都都逸を歌い始めた。とにかく忘れたかった。この理由の分からない苛立ちを。
长州征伐
我得知幕府军发出长州征伐的号令是在一个月之后。我和往常一样在下关的青楼二层喝酒,一名熟知的藩士跑进来,告诉我出大事了。
幕府派了非常能干的老中小笠原长行指挥全军,约15万的诸藩兵力正从四面八方向长州进军。
终于开始了吗。这个时刻终于到来了。一瞬间我这样想到。但是,我却立刻说道,这已经和我没有关系了,就这样打发那个藩士回去了。
“真的没关系吗,做这种事情。”
看着我若无其事的弹着三味线,喝着酒,鹈野担心的问道。
“这种事情是什么意思。能和你喝酒我可是非常高兴啊。”
三千世界鸦杀尽,与君共寝至天明。我一边哼唱着都都逸的曲调,一边弹拨着三味线,半开玩笑的唱了起来。面对我这样的态度,鹈野有些欲言又止,最后只是说道,晋作先生你变了呢。她说我和以前比起来,失去了霸气,无论做什么都不开心。
“没有那回事。不管是现在还是过去,我就是我。怎么会变呢。”
我认真地否定道,但是在我的内心深处,却惊叹于鹈野的敏锐直觉。我最近确实不管做什么都提不起兴致。就像我来到这个时代之前一样。实际上,就算像现在这样喝着酒,疯狂嬉闹着,也总觉着心理有个结。
“为什么还是不开心。这样下去,我就能让那个大吃一惊了。”
和带领长州打败江户幕府比起来,挑战看不见的历史齿轮要刺激得多。但是,就算我达成了自己的希望,我却一点都感觉不到兴奋。
“鹈野,多叫点人来,好好热闹热闹。”
我让鹈野多叫些店里的人过来,然后便开始高声唱起了都都逸。总是,我想要忘记。我想要忘记这莫名的烦躁。
11.心のままに
伊藤俊輔が再び俺のもとを訪ねてきたのはそれから数日後のことだった。すぐに済むという申し出に屋敷の門の前で出迎えると俊輔は軍服に身を固め、馬を引いた姿で現れた。明らかにこれから前線へと向かう出で立ちだ。
「何の用だ。力を貸せということなら、答えは前と同じだぞ」
「いいえ、出陣の前に、晋作さんに一つだけ伝えたいことがありまして」
「伝えたいこと?」
「ええ、覚えていらっしゃいますか、あなたが口になさったことを」
そういうと俊輔は欧米四カ国との講和条約を取りまとめた日の夜を思い出すように告げた。
「あの時、あなたは自分の中だけの考えに縛られず、己の思いを解き放ってとおっしゃっていた。ですが今の私にはあなたのほうが思いを閉じ込め、己を縛っているように見えます。ただ、それだけを伝えたかった」
そういうと、俊輔は一礼とともに馬に乗り、俺に背を向けた。
「俺が己自身を縛っている」
去っていく俊輔の背を見ながら、俺の心にその言葉が浮かんでは消える。俺が自分の作ったルールに縛られいるというのだろうか。そんなはずない。そう言い聞かせながらも俺はその疑問を捨て切れなかった。自分はどう生きたいのか。どう生きるべきなのか。いつの間にか、俺はそんな問いを、己の胸に投げかけていた。やがて一つの答えが浮かび上がってくる。そう、答えはとても単純だった。
そうだ、世の中を面白くするのは自分の心だ。勝ち負けなんでのことは関係ない。ただ、自分自身の心が欲するまま、感じるままに行動すればいいのだ。そうすれば、どんな時も後悔などするはずがない。それこそが何にも縛られない生き方だ。
「俺はずっとそうやって生きてきたはずだ」
そう呟くと、俺は俊輔の後を追って走り出していた。彼とともに戦へと赴くために。
そして、慶応2年6月12日の夜半、ついに幕府軍との戦端が開かれた。
「突入せよ!」
夜陰に乗じて大島を占領した幕府の艦隊に近づくと、俺は長州の軍艦丙寅丸を全速力で敵艦の間に突撃させた。同時にすべての砲門を開き、ひたすら射撃を続けさせる。予期せぬこの攻撃に混乱した幕府の艦隊は闇夜のため小型の丙寅丸の姿を捉えられず、たちまち味方同士の船で大砲を打ち合う結果になってしまった。そして、ようやく幕府側の艦船の蒸気機関が動き出したころには、俺はずでに丙寅丸を戦場から離脱させていた。この奇襲攻撃に動揺した幕府の艦隊はせっかく占領した大島を捨て、長州藩の海域から遠く去ったのだった。こうして、幕府軍との初戦が見事長州軍の勝利に終わった。だが、勝利に沸き立つ中、俺は己の命が終わりに近づいているのを悟っていた。
戦闘を指揮している最中に吐血したのだ。それは高杉晋作の命を奪った病、結核が俺の体を蝕んでいる証拠だった。
随心所欲
几天后,伊藤俊辅再次找到我。因为他说说几句话就好,我便来到房屋的门前迎接他。出现在我面前的俊辅,身穿军装,牵着马。这显然是准备奔赴前线的打扮。
“找我什么事?如果还是想让我帮忙的话,我的回答和先前一样。”
“不,只是在上战场前有句话想告诉晋作先生。”
“有句话想告诉我?”
“您还记得吗,您亲口说过的话。”
接着,俊辅提起了同欧美四国缔结和平条约那晚的事情。
“那个时候,您说不要被自己的想法束缚,要解放自己的思想。但是,在我看来,您才是被自己的想法困住,被自己束缚了。我只想说这个而已。”
说完,俊辅向我行了一礼,便乘上马背,离开了。
“我自己束缚着自己。”
我目送着俊辅的背影,这句话在我内心中不断闪现。我被自己的信条束缚住了吗?怎么可能。我这样告诉自己,但是这个疑问却始终困扰着我。我想要怎样的生活。我该过上怎样的生活。不知从什么时候开始,我这样扪心自问道。不久,我便发现了答案。是的,答案非常简单。
是啊,让这个世界变得有趣的是自己的心。和胜负无关,只不过要随心所欲,跟着感觉行动。只要能做到这些,不管什么时候都不会后悔。这才是不被束缚的生活方式。
“我本应该一直这样生活的。”
我这样对自己说完,便向俊辅离开的方向追了过去。我要和他共赴战场。
庆应2年6月12日深夜,和幕府军的战争终于拉开了序幕。
“进攻!”
我趁着夜色接近了已经占领了大岛的幕府舰队,然后便命令长州的军舰丙寅丸全速突击敌舰。同时,打开全部炮门,全力射击。幕府的舰队被这突如其来的攻击打乱了阵脚,一时间找不到小型军舰丙寅丸的行踪。不久,就变成了自己的军舰开炮攻击己方的混战。之后,等幕府舰队的蒸汽机关终于开始运作的时候,我已经让丙寅丸脱离战场了。被这次奇袭打昏了头的幕府舰队,放弃了好不容易才占领的大岛,离开了长州藩的海域。这样,长州藩与幕府军首战告捷。但是,在一片胜利的欢呼声中,我意识到我的生命已经接近终点了。
在指挥战斗的时候,我吐血了。这便是最后夺走了高杉晋作生命的肺结核,在侵蚀着我的身体的证据。
12.面白き人生
狭い庵の中を春の香りが吹きむけどこからともなく鶯の鳴き声が聞こえてくる。それとともに開け放たれた障子戸から風に乗って一枚の桜の花びらが舞い込み、俺の枕元に落ちた。
刀を売り、山を帰って住むか。寝床に横たわってまま庭先に咲く満開の桜を見守りながら俺は自分の仕事が終わったことを感じていた。
大島口での戦いから10ヶ月後、俺は下関郊外にある小さいな庵で病の床についていた。大島口に続き、小倉会場での戦いに勝利し、幕府側の重要拠点小倉城の攻略も果たしたものの、俺の体はもはや戦場に立っていられるものではなくなっていたのだ。だが、長州軍の勝利が続いたため、幕府の威信が揺らぎ始めた。そして、俺が抜けた後も長州は各地の戦いで勝利を収め、ついに幕府側から和睦の申し出を受けるまでにいたっていた。結果、
幕藩体制の崩壊は急激に加速し、昨今では将軍が朝廷へ政の返還を行うという噂まで流れているらしい。
「結局、すべては歴史通りに進んだってことか」
半身を起こすと俺は枕元に置かれた三味線に手を伸ばし、軽く弦を弾いた。だが、放たれた音はなんとも弱弱しいものだった。この痩せ衰えた体ではすでに三味線を弾く撥を持つ手にすら力が入らなかったのだ。
「やれやれ、この様じゃもう酒も飲めそうもないな」
俺の体を蝕む結核の進行は予想外に早く、もはや回復の見込みはないようだった。咳と吐血を繰り返し、布団に寝たきりで自由に動くこともままならぬ身だ。しかし、そんな体になっても、なぜか心は清清しかった。嘘ではない。僅か3年あまりだったが、十分に面白い人生だった。あの黒衣の老人には感謝してもいいくらいだ。
ふと、人の気配を感じて、俺は視線を庭先へと向けた。そこに立っていたのはあの老人だった。
「まだあんたに会えるとはな。こんな風になった俺でももとの時代に戻れるのか」
皮肉めいた言葉を吐いた俺に、老人は静かに告げた。
「戻る必要はなかろう。おまえは高杉晋作になるべくこの時代に来たのだから」
「俺が高杉晋作に。」
老人の言葉に自然と笑みが浮かび、気づくと俺は声を出して笑っていた。人の敷いたレールの上を走ることを嫌い続けた俺が、時代に望まれ、そのレールを走ったというわけか。そいつは面白い。真実かどうかはどうでもよかった。ただ、そう考えると、なんと愉快なことか。
「面白きこともなき世を面白く」
そう呟きながら、俺はゆっくりと目を閉じた。満面の笑みを浮かべて。
有趣的人生
在狭小的草庵中,吹来了春天的气息,到处都能听到黄莺的鸣叫声。同时,半开的拉门中,乘着风飞进了一片花瓣,刚好落在我枕边。
弃刀归隐山田吗。我躺在床上,看着庭院中满开的樱花,真切的感觉到一切都结束了。
大岛一役后的10个月,我来到下关郊外的草庵安心养病。大岛一役之后,在小仓战役中也取得胜利,成功攻下了幕府的重要据点小仓城。但是,我的身体却已经无法再指挥战斗了。但是,因为长州军的接连胜利,幕府的威信开始动摇。在我离开战场之后,长州仍然捷报连传,终于,幕府方面提出了讲和。此次战斗,加快了幕藩体制的崩溃,最近,甚至传出了将军即将将政权交还朝廷的传言。
“结果,一切都按照历史的轨迹发展啊。”
我半支起身子,伸手拿起了放在枕边的三味线,轻轻地拨动了一下琴弦。但是,弹出的声音却十分微弱。看来我这衰弱的身体,连弹三味线的力气都没有了。
“唉,这样子估计也喝不了酒了。”
侵蚀着我的身体的结核,发展的比我想象的要快,已经没有康复的希望了。在不断地咳嗽和吐血中,我已是卧床不起,不能随意行动了。但是,虽然身体这么衰弱,但是我的内心却十分情爽。这不是谎言。虽然只有短短的三年,却是一段十分精彩的人生。我甚至想要感谢那个黑衣老人了。
忽然,我感觉到院子中有人,便望了过去,站在那里的,正是那个老人。
“没想到还能再见到你,我现在这个样子,还能回到原来的时代吗?”
面对我略带讽刺的语调,老人静静地说道。
“没有回去的必要了吧。因为你就是应该成为高杉晋作才来到这个时代的。”
“我成为高杉晋作?”
听了老人的话,我忍不住笑了出来。我一直讨厌走别人铺好的道路,结果,却被时代选中,走上了这条早已注定的道路吗。
“真是有意思。”
无论是不是真的都无所谓了。但是,想到这里便觉得有趣。
“让无趣的世界变得有趣。”
我小声呢喃道,接着满面笑容的慢慢闭上了眼睛。
1.オープニング
過去から未来へ、連綿と続く時の流れにおいて、偉人と呼ばれる歴史に残る出来事を成し遂げる人物が現れます。彼らの決断の裏側には何があったのか。これは偶然のいたずらから、時の狭間に迷い込んだ者たちの物語。そして、運命に翻弄された者たちの物語。その扉を開く時の散歩者があなたを知られざる歴史の裏側にご案内することになりましょう。
序幕
从过去到未来,在连绵不断的时间长河中,不断出现完成永载史册的丰功大业的伟人。在他们的决断的背后隐藏着什么呢。这是关于因为偶然的恶作剧而迷失在时空夹缝中的人们的故事。同时,也是被命运玩弄的人们的故事。打开这扇时空之门,让时空的散步者来引领你走向不为人知的历史另一面吧。
2.夜襲
夜の瀬戸内海、大島の沖合いに停泊する幕府の軍艦の灯火だけが、闇の中で空の星のように浮かび上がって見える。どうやら船を動かす蒸気機関の火が消え、兵員たちもすっかり眠りの落ちているようだ。昼間の勝利の余韻に浸って、すっかり油断しきっているのだろう。最高だ。ぞくぞくするね。
ゆっくりと敵船に近づく丙寅丸の船上で、俺は思わず笑みを浮かべた。
このまま夜襲をかければ間違いなく勝てる。だが、この好機を見過ごせば、果たして歴史は大きく変わるだろうか。それとも。いま、俺は明らかに運命の分かれ道に立っていた。
慶応2年6月、太平の眠りを覚ます黒船の来航から10年あまり、攘夷派の急先鋒として公然と倒幕と唱える長州藩は、江戸幕府によって攻撃は受けていた。後世に第二次長州征伐とも四境戦争とも呼ばれる戦いだ。そして、15万もの兵力を動員した幕府軍が、最新鋭の軍船4隻を派遣し、瀬戸内海に浮かぶ大島を占領させたのがつい昨日のこと。そこを足掛かりに幕府は一気に長州藩の拠点である周防へと攻め込もうというのだ。そうなれば、四方から幕府軍に攻められている長州藩は確実に負ける。だが、本当にそうなのだろうか。
「あの、なぜそのような軽装で、高杉さんはわれらの大将です、もう少し威厳というものをお考えになられては」
と、着流しに扇子一本を持っただけという俺の恰好が気になったのか、副官の一人が声をかけてきた。
「威厳か、俺たちは必ず勝つ、恰好などこれで十分さ」
そう、今度の夜襲は成功し、長州は必ず幕府軍に勝つ。そして、江戸幕府はいずれ大政奉還によって終焉を迎え、日本は明治政府が行う改革によって西洋のような近代国家となっていくだろう。俺にはそこまで未来が分かっていた。なぜなら、それこそが俺の知っている正しい歴史の流れなのだから。それでも、もし海軍総督である俺がわざと負けるように指揮をとったら、果たしてその決断で歴史は変わるのだろうか。それとも、やはり歴史という大きな流れの中で簡単に修正されてしまうのだろうか。
「それもまた面白い」
思わずそんなつぶやきが漏れた。かつての俺の人生と比べたら、なんとスリルのある人生なのだろう。俺がこの時代で高杉晋作として生きる前、150年先の日本で生きていたあの頃と比べて。
夜袭
夜晚的濑户内海,大岛的海面上,只有停泊着的幕府军舰的灯火,仿佛黑暗中的星星一般发出闪闪亮光。看起来,船上的蒸汽机关的火都已经熄灭了,士兵们也都进入了梦想。大概是人们还沉浸在白天胜利的喜悦中,所以完全放松了警惕吧。太好了。好兴奋啊。
我站在慢慢接近敌船的丙寅丸上,忍不出浮现出一丝笑容。
如果现在进行夜袭的话一定会赢。但是,如果我放弃了这个绝好机会的话,历史会不会发生巨大的变动呢。到底会怎样呢。现在,我正站在命运的分岔路上。
庆应2年6月,黑船的来航导致日本从太平的美梦中苏醒,距今已经十多年了。作为攘夷派的急先锋更公然宣称打倒幕府的长州藩,遭到了江户幕府的攻击。这边是被后世称为第二次长州征伐,同时也被称为四境战争的战事。然后,动员了15万兵力的幕府军队,派遣了四艘最先进的军舰,终于在昨天占领了濑户内海中的大岛。因此为契机,幕府准备大举攻入长州藩的据点周防。如果这样的话,被幕府军队四面围击的长州藩一定会输。但是,真的会这样吗。
“您为何一身轻装打扮。高杉先生您使我们的大将,您应该在考虑一下应该具备的威严。”
也许是太过于介意我身穿一件简单的和服,手拿扇子的打扮了。副官中的一个人开口说道。
“威严吗?我们一定会赢的。这样的打扮就足够了。”
是啊,这次的夜袭成功的话,长州一定会战胜幕府军队。然后,江户幕府早晚会将大政奉还,迎来自己的终结。日本也会因为明治政府执行的改革,而成为和西洋的近代国家一样吧。我对于这些未来十分清楚,因为,这才是我所知道的真正的历史走向。可即使如此,如果身为海军总督的我故意做出会战败的指挥的话,我的决定,能对历史带来多少改变呢。还是说,在历史这巨大的洪流中被简单的修正呢。
“有意思。”
想到这里,我禁不住呢喃道。我和曾经的人生比起来,这将是多么刺激的人生啊。在我来到这个世界成为高杉晋作之前,和我生活在150年前的日本那个时候比较起来的话。
3.退屈な人生
人間は先が見えないことに不安を感じ、常に安心を求めて生きるという。だが、どういうわけか俺は昔から違った。どんな安定を手にいれようと、その日常に慣れてしまうといつの間にか、その生活のすべてを破壊したくなってしまうのだ。自分で言うのもおこがましいが、頭の回転が速く、物事の先が見えすぎて、飽きっぽい性分に育ったためか、それとも反抗心が旺盛で、何かのルールに縛られることを嫌っていたからか。父親が銀行員で、母親が名家の出という裕福な家庭に育ち。幼い頃からエリート教育を受けさせられた俺は、学業優秀、運動神経も抜群と、親の望み通りの子供として育った。
「自分たちの敷いたレールに乗っていれば、お前は幸せになれる」
両親は本気でそう信じていた。そんな考えにあのまま順応できていれば、もしかすると俺は平凡な社会生活を送っていたかもしれない。しかし、中学に進んだ頃から、俺はただ決められた物事を凝らしていく生活に強烈に退屈さを感じるようになっていた。そして、高校を卒業とするすぐに、自分と同じ道を歩ませようとする両親に反発し、勘当同然に家を出た。
何にも縛られることなく、とにかくおもしろおかしく人生を生きてやる。家を飛び出した俺はそう決心していた。将来のリスクを計算し、それを避けるために保険をかける。それが人生だと考えている両親への反発もあった。その後は友人のもとに転がり込んで、ベンチャー企業を立ち上がったり、わざと海外の危険地帯で放浪生活を行ったりなど、ひたすら刺激を求める生活を送り続けた。さらに日常生活でも刺激となるものなら犯罪にならない限り、どんなものであろうと手を出した。そんな破滅的とも思える俺の生き方を見て、苦労知らずで自分によっているだけだというやつもいたが。他人の誹りはまったく気にならなかった。俺はただ生きることが退屈という思いを捨てきれず、常に刺激がないと、生きていると実感できなかったのだ。だが結局、何をしても、その憂鬱が晴れることはなかった。仕事は成功が見えた時点で、冒険はゴールが近づいたとたんに、どれもそれまで気づいたものをあっさり捨て去ってしまった。どんなに情熱を持って取り込んで見ても、どれも先が見えた時点で虚しさを感じるようになってしまうのだ。
「本当に退屈だよ、人生ってもんは」
いつしかそれが俺の口癖になっていた。そんな時だ。俺があの奇妙な老人に遭遇したのは。
无聊的人生
人们总是对无法预见的未来感到不安,在生活中寻求着安心。但是,不知什么原因,我一直都与众不同。不管现在的生活是多么的安稳,只要习惯了这种生活以后,便渐渐想要将一切全部都破坏掉。虽然由自己来说有些厚颜无耻,但是我头脑灵活,总是能迅速看到事情的发展走向,因此便养成了容易厌倦的性格吧,还是因为反抗心理旺盛,不愿意被规则所束缚呢。我成长在一个富足的家庭中,父亲是银行职员,母亲是名门出身。从小就接受着精英教育,学业优秀,运动神经出众,父母按照他们的希望来培养我。
“如果你按照我们为你铺好的路走下去的话,一定会幸福的。”
父母真心这样相信着。如果我按照这样的想法生活下去的话,说不定,我也能过上平凡的生活。但是,升入初中开始,我对于这种已经被决定好的生活,感到了强烈的厌烦。然后,高中毕业后,对于父母想让我走上和他们一样的道路,我开始反抗,索性与家人断绝关系,离家出走。
总之,我要过上不受任何约束,又有趣的人生。离开家的我下定了决心。这同样也是对父母的一种反抗,他们眼中的人生,便是计算着将来会发生怎样的危险,如何规避危险。之后,我来到朋友家,开始建立新型风险企业,故意到海外的危险地带流浪,我只是为了寻求刺激而活着。而且,在日常生活中,能够给我带来刺激的东西,只要不违法,我都会尝试。有的人看到我这种近乎于自我毁灭的生活方式,会觉得我是不知道人世疾苦,只知道享受的人吧。他人的冷言冷语,我全然不放在心上。我只不过觉得活着太过于无聊了,如果不经常刺激自己的话,就几乎感受不到自己还活着。但是,不管做什么,我心中的抑郁却无法消散。在事业快要成功的时候,在冒险接近终点的时候,所有的事情,在我能预测到结果的时候,我都会彻底放弃。不管我曾经投入了怎样的热情,只要我能够看到结局的时候,我便会感到无尽的空虚。
“人生,真是太无聊了。”
不知何时,这句话成了我的口头禅。我就是在这个时候,和那个奇妙的老人相遇的。
4.黒衣の老人
何か新な刺激に出会うことを期待して、日本各地を旅することにした俺は、その日山口県の萩の町へと来ていた。江戸時代長州藩の藩士が暮らしていた萩は、当時の古い町並みが残された静かな町だ。そんなことを蝉の鳴き声に囲まれながら、目的もなく歩いていた俺はふと前方を歩く奇妙な老人に気づいた。
その老人は真夏にも関わらず黒のコートに黒の帽子という姿だった。それ以上に妙だったのは俺以外の人間が誰もそのことに気を留めず、また老人の周囲がまるで陽炎のように歪んだ見えたことだ。俺は信じにそこが追い求める面白いことがあるのを感じ取った。老人はそれだけ異質で、現実とかき離れて見えたのだ。気づくと、俺は引き寄せられるように老人の後を追っていた。土塀に囲まれた城下町の風情を残す路地を歩き、やがてたどり着いたのは高杉晋作生誕の地、と記された石碑の立つ一軒の古い武家屋敷の前だった。
「高杉晋作」
それは150年前に起こった明治維新の立役者の一人であり、長州藩が幕府の攻撃で存亡の危機に瀕した時に、彼の創設した奇兵隊とともに、そのピンチを救った人物の生家だった。老人の目的はこの屋敷を訪れることだったのだろうか。拍子抜けしながら、俺が見守っていると、門扉が閉まっているにもかかわらず、老人は屋敷の前へゆっくりと歩みを進めていくではないか。その瞬間だった。そこに忽然と光が放つ扉が現れたのだ。
「あんた、いったい」
あまりにも不可解な情景に思わず、声を上げてしまい、老人がこちらを振り返る。刹那、鋭い眼光に吸い込まれてもしたかのように、俺は意識を失っていた。
黑衣老人
我期待着能遇到什么新的刺激,便踏上了周游日本的旅程。那天,我来到山口县的萩市。江户时代,长州藩的藩士们生活过的萩市,当时的古老街道仍保留着,是个非常宁静的城市。在四周不断响起的蝉鸣声中,我漫无目的的走着,突然,我注意到前面有一个奇怪的老人。
那个老人,在这盛夏时节,还穿着黑色的外套,戴着黑色的帽子。更奇怪的是,除了我以外似乎没有任何人注意到他。而且,老人的周围仿佛升腾的热浪般,产生了扭曲。我相信那里有我追求的乐趣。老人是那么的特殊,感觉仿佛不属于这个现实。等我回过神来,我已经跟着老人追了过去,仿佛被什么牵引着一般。我走在在土墙环绕着的仍保留着城下町风情的街道上,最后来到的地方是一家古老的武士宅邸,房屋前的石碑上刻着 高杉晋作出生地。
“高杉晋作?”
他是发生在150年前的明治维新的重要角色,长州藩在幕府的攻击下面临存亡危机的罐头,他组织的奇兵队,解救了长州藩的危机。这里便是他的出生地。老人的目的似乎就是这座屋子吧。我有些失望的继续看着他,虽然大门紧闭,但是老人还是慢慢的继续向房屋走去。就在那一瞬间,突然出现了一扇闪光的门。
“你到底是”
面对着无法理解的情景,我忍不住叫出了声,老人回头看了看我。刹那间,我仿佛被他锐利的眼光吸进去一半,失去了意识。
5.幕末へ
目を開けると、俺はなぜか畳敷きの部屋に倒れていた。ふすまと障子戸に囲まれ、天井に梁のある古い日本家屋の一室だ。しかもいつの間に着替えさせられたのか、服が着流しへと変わっているのではないか。
「何が起こった」
なんとか思い出そうとするものの、記憶が混乱しているのか、思考が定まらない。と、俺はさらなる異変に気付いた。逞しい腕に鍛え貫かれた体。見知ったはずの自分の体つきが、まるで別人のものに思えるのだ。まさかあの老人に幻覚でも見せられているのだろうか。その時だ。
「晋作さん、よろしいでしょうか」
障子戸の向こうからこちらに呼びかける声が聞こえた。
「晋作さん?」訝しがりながらも、障子を開けると、俺は一瞬その場に立ち尽くしてしまった。そこに立っていたのは、羽織袴を着て、髷を結った侍姿の若者だったのだ。
「晋作さん、藩主様がお呼びです、急ぎ搭乗の支度をなさってください」
そう言ってこちらを見る若者は、格好といい、言葉使いといい、とても現代人には思えなかった。しかも自分は長州藩の殿様の使者で、俺を迎えにきたのだという。何より驚いたのはどうやら俺のことをあの高杉晋作と信じきっているらしい態度だ。まさか高杉晋作の生家を見たために、こんな奇妙な夢を見ているのだろうか。だが夢と判断するには、すべてがあまりにもリアルだった。まあいい、思わず笑みが浮かぶ、俺は逆にこの時代に興味を持た。夢であれ、現実であれ、どちらにしても面白い。こうなったら、最後まで流れに乗るまでだ。
「分かった、すぐに支度する、ただ、その前に少し聞きたいことがあるんだが」
搭乗の準備をしようと背を向けながら、俺は使者の若者に声をかけた。羽織袴に着替えながら、俺は晋作とは知己の間柄らしいその若者、伊藤俊輔から藩主に呼び出された理由を聞き出していた。
彼の話によると、攘夷倒幕を標榜する長州藩はその意思を天下に示そうと、外国商船に攻撃をくわえたものの、逆に同盟を組んだ欧米四か国の艦隊から反撃を受け、存亡の危機に立たされているらしい。そのためかつて上海に渡った経験があり、奇兵隊の創設という実績もある晋作が、講和条約を結ぶ全権大使として選ばれたのだという。
「夢でないとすれば、ずいぶんと面白いことになってきたもんだ」
詳しい話を聞かされながら、俺は刺激を求める己の性(さが)が呼び覚まされるのを感じていた。そして支度を終えて、迎えの籠を乗ろうと門を出たところで、俺は再びその場を立ち尽くしてしまった。
「これは…」
屋敷の門構えは意識を失う前に見た晋作の生家のものと同じだったが、目の前に広がる風景は、明らかに記憶の中のものとは異なっていた。あったはずのコンクリート造りの建物や舗装された道路はすべて姿を消し、そこには百年以上前の木造の家屋が立ち並ぶ、古い日本の町並みが広がっていたのだ。どう考えてもセットには見えない。こうなると理屈は分からないが、俺は本当に幕末の長州藩士、高杉晋作になってしまったと考えるしかないようだ。
「本当におもしろいじゃないか、わくわくしてきやがる」
ありえない光景を前に、俺は戸惑いより先に武者震いを感じていた。幕末の日本で歴史上の人物である高杉晋作として生きる。これ以上の幸運があるだろうか。まさに俺の追い求めていたおもしろおかしく刺激に満ちた人生だ。そうやって腹を潜ると俺は迎えの籠に乗り込み、藩主の待つ、山口の政治堂へと向かった。
来到幕末时代
睁开眼睛,不知为何我发现自己倒在一件铺着榻榻米的房间里。这是一间周围全是拉门和拉窗,房顶上有横梁的古旧的日式房屋。而且不知何时我的衣服居然被换了,我身上穿着的是简便的和服。
“发生了什么?”
我想努力回忆起发生了什么,但是记忆非常混乱,我没办法思考。这是,我注意到一些更奇怪的事情。那就是我粗壮的手臂和经过历练的身体。我自己的身体仿佛完全变成了别人的身体一样。难道,是那个老人制造的幻觉吗。就在这时。
“晋作先生,我可以进来吗?”
拉门外忽然传来了声音。
“晋作先生?”我心怀疑问地打开了拉门,那一瞬,我呆立当场。站在那里的,是一名穿着羽织袴和服,梳着发髻的武士打扮的年轻人。
“晋作先生,藩主有请,请您尽快准备出门吧。”
年轻人一边说着,一边看着我,无论是他的打扮,还是他的话语,都让人无法相信他是现代人。而且,他还说自己是长州藩藩主的使者,是来接我的。更让我吃惊的是,他的态度简直就是把我当成了那个高杉晋作。难道,我因为看到了高杉晋作的故居所以才做了这个奇怪的梦吗。可,如果我是在做梦的话,这一切都太过于真实了。算了,我忍不住笑了一下,我对这个时代有兴趣。不管是做梦,还是现实,都很有趣。就让的话,就让我顺其自然吧。
“明白了,我马上就准备。但是,我还有点事情想问一下。”
我一边背过身去进行外出的准备,一边向使者问道。在我换穿衣服的时候,我从这名似乎同晋作早就相识的年轻人伊藤俊辅那里问出了藩主想见我的原因。
按他所说的,提倡攘夷倒幕的长州藩,为了向天下昭显自己的主张,对外国的舰队发起了攻击,但是却遭到组成同盟的欧美四国的舰队反击,面临着生死存亡的危机。因此,他们想请曾经到过上海,并创立了奇兵队的晋作出面作为全权大使缔结和平条约。
“如果不是在做梦的话,还真是变得有意思了呢。”
一边询问着详细的内容,我同时感到自己体内寻求刺激的本性苏醒了。做好准备之后,我向门外的轿子走了过去,我再次被眼前的景象震惊了。
房屋的建筑和我失去意识前看到的金做的故居一样,但是我眼前的风景却和记忆中的大相径庭。原本的混凝土建筑,柏油马路全都不见了,取而代之的是一百年以前的木造房屋林立的古代日本街道。怎么想都不可能。事到如今,虽然不知道是什么原因,但是我似乎是真的来到幕末年代成了长州藩士高杉晋作。
“太有趣了,好激动啊。”
面对这不可能的情景,我最先感受到的不是困惑,反而是激动。在幕末年间的日本,成为历史上有名的高杉晋作。还有比这更幸运的事情吗。这正是我所追求的充满趣味和刺激的人生啊。我下定决心之后,坐上了迎接我的轿子。前往藩主所在的山口政治堂。
6.和平交渉
数週間後、俺は欧米四か国軍の旗艦であるイギリス船、ユリアラス号の上にいた。長州藩の藩主毛利敬親から代表の任を抱かされ、講和条約を結ぶ会談を行うためだ。長烏帽子に派手な陣羽織と、この時代でも些かいき過ぎでも思える恰好で、交渉の場を挑んだ俺は、立ち並ぶ異国の連中を睨みつけた。幸いなことに、この体には俺が入り込むまでの高杉晋作の記憶や知識が残されており、藩主の敬親と面会し、この会談の段取りを決めるまで、さほど時間はかからなかった。晋作としての知識を総動員した俺は、敬親を説き伏せ、和平にこぎつけたならば、攘夷の矛先をいったん収め、外国と取引するという約束を取り付けていた。それによって、いずれ攻め寄せてくる幕府に対抗する武器や軍船を手に入れる算段だ。幕府と外国勢の双方を敵に回した状況を打開するには、それしか策はなかった。そのためにも、この交渉を失敗に終わらせるわけにはいかない。
「それでは高杉さん、話し合いを始めましょうか」
欧米側の通訳が司令官の言葉を伝え会談が始まった。だが、4か国側が出した条件の中で、どうしても承諾できない要求があった。瀬戸内海に浮かぶ彦島を中国の上海や香港のように租借地として英国に譲るようにというのだ。この条件に応じれば、もしかするとそこを足掛かりに、いずれ近隣の港でなる、下関や三田尻もその勢力圏に納められてしまうかもしれない。それは到底、長州にとって承服できる要求ではなかった。
「承知できぬ」
そう言ってすくっと立ち上がると、続いて俺は歌でも吟じるように言葉を放った。
「そもそも日本国は、高天原より始まったもの、初めに国之常立神がましまし、続いて伊邪那岐、伊邪那美なる、2柱の神が現れ、天の浮橋に立ちたまいて、天の沼矛を持って、海を探り、而して、その矛の先より滴る雫が」
そのまま日本の国とはいかなる成り立ちなのかと、事細かに唱え続ける俺に、4か国の代表たちは唖然とした表情を浮かべる。長州側の通訳として同席した伊藤俊輔やほかの重臣たちも同じく目を丸くしていた。もしかすると、気でも違ったかと思われているかもしれない。だが、これは考え抜いた末の作戦だった。どうしても譲歩できない以上、ひたすら時間を稼ぐしかない。相手が折れるか、こちらの体力が尽きるまで、俺はこの猿芝居を続けるつもりだった。どの道、失うものなど俺にはないのだ。しかし、思ったより早く通訳が俺の言葉に待ったをかけだ。
「ストップ!もう充分です、高杉さん、司令長官のミスタークーパーは租借地の件を外して、外国船に下関海峡の通航を許可するという条件のみで構わないと言っています」
その申し出は長州が今度の交渉を無事に乗り切ったことを示していた。こうして歴史通り、欧米4か国と長州藩との講和条約は無事に締結されたのだった。
和平交涉
数周之后,我来到欧美四国联军的旗舰,英国舰队的尤里亚勒斯号上。这是因为长州藩的藩主毛利敬亲让我作为代表,进行缔结和平条约的会谈。我头戴很长的乌帽子,身穿阵羽织,这身打扮即使在这个时代也有些夸张,冷眼看着那些异国人士。幸运的是,在我进入这个身体之前的高杉晋作的知识和记忆都保留着,我和藩主敬亲会面,到决定进行会谈并没有花费多少时间。我运用晋作的知识说服了敬亲,如果想要争取和平的话,必须先要暂停攘夷,和外国进行交易。并通过这种方法得到对抗幕府的武器和军船。如果想要改变现在这种被幕府和外国两面夹击的状况,只有这一个办法。因此,这场交涉不能失败。
“那么,高杉先生,开始谈判吧。”
欧美方面的翻译传达了司令官的话语,会谈开始了。但是,在四国给出的条件中,有一个无论如何都不能答应的条件。那就是将濑户内海中的彦岛,像中国的上海,香港一样作为租借地转让给英国。如果答应了这个条件,那么就有可能以此为契机,导致邻近的港口下关和三田尻也早晚被划入他们的势力范围。这是对于长州来说无论如何不能让步的。
“我不能答应。”
我说完便站了起来。接着我像唱歌一般说道。
“日本国始于高天原,最初有了国之常立神,接着有了伊邪那岐、伊邪那美二神。二神立于天浮桥上,执天沼矛搅动大海,而矛尖垂落之滴露……”
我便这样,开始详细地讲述起日本的古代传说,四国的代表都浮现出了茫然的表情。长州的翻译伊藤俊辅和其他的重臣也都瞪圆了眼睛。他们大概认为我疯了吧。但是,这确实我深思熟虑过后的方案。既然无论如何都不能让步,那就只有尽量拖延时间了。到底是对方先屈服,还是我先累趴下呢,无论如何我都要把这场猴戏演到底了。反正我没有什么可以失去的。但是,事情发展的比我想象的要快,翻译开口让我停下了。
“好了,已经够了。高杉先生。司令官库珀先生同意,去除租借地的条款,只要允许下关海峡对外国船只通航就可以了。”
这意味着长州顺利完成了这次交涉。就这样如史实所记载的,欧美四国同长州顺利缔结和平条约。
7.革命児
「いや、さすが高杉さんだったよ、高杉さんが口上を述べ始めた時の連中の顔、見せてやりたかったなぁ」
交渉を終えた夜、馴染みの妓楼で祝杯を挙げながら、伊藤俊輔は知己の藩士たちに向かって、相手の要求を屈することのなかった俺の度胸を仕切りと褒め称えた。実際、交渉は大成功だった。懸案だった賠償金の支払いも長州はかつて幕府が出した外国船打ち払いの例に従ってだけだと言い逃れ、請求先は幕府にということで、すでに話がつき、藩にとって実質的に損害と言えるものは何もなかったのだ。
「だが、問題はほかにも山積みだ」
浮かぬ顔で同席していた井上門太が告げた。確かに門太の言葉どおり、4か国同盟軍との和平交渉は成功したものの今の長州藩が危機的な状況にあることに変わりはない。諸外国の軍に敗北を期した以外にも、京都では過激な攘夷派の暴走により、長州藩に同乗する公家たちが追放され、多数の志士たちが討死。さらに、幕府により長州征伐によって、久坂玄瑞という有能な人物たちも戦死し、藩内の権力は攘夷派の手から一気に幕府に従うべきと唱える恭順派のもとへ移っていた。
「まずは藩政を恭順派から再び攘夷派の手に取り戻す必要がありますね、それが成功しない限り、長州藩が再び倒幕運動の中心になることは難しいでしょう」
「それはそうだが、まずは藩主様に腹を決めていただければ」
俊輔の言葉に門太は応じ、たちまち若い二人の間で議論が始まる。のんびりと三味線をかき鳴らしながら、その様子を見ていた俺は思わず嘆息した。
「やれやれ、また始まった」
彼ら長州の若者たちは、断るごとに議論をぶつけ合っていた。恐れくそれだけ本気でこの国の行く末を案じ、現状を憂いているのだろう。実際ここまで何かに熱くなれる彼らの姿は、いつも世の中に退屈していた俺にとって、どこかまぶしくも思える。だが今は理屈をくどくどと述べている時ではないはずだ。
「くだらねぇな」
三味線をかき鳴らしていた手を止め、そう告げた俺に、俊輔たちは驚きの声を上げた。
「ちょっと待ってください、晋作さん。くだらないって、どういう意味です」
「どうもねぇよ。四角四面の議論なんぞほっとけ。攘夷だ開国だって、てめぇら、そんな自分の中だけの考えに縛られてどうする。どうせ一度きりの人生だ、そんな縛りなんか、忘れちまえばいんだよ」
俺に言わせれば、今は論理よりも、実践が必要とされる時なのだ。なにかひとつ行動を起こすためにも理屈を必要としているような場合じゃない。もっともそう思うのもおもしろおかしく人生を生きることを目的としている俺にとって、彼らの崇高な理念や志も、どこか他人事でしかなかったからかもしれないが。
「ほら、それより人生をもっと楽しめ。それで心中の熱をより燃えたぎらせろ。それ以外、ほかに何がいるってんだ」
そういうと、納得のいかない表情の志士たちを横目に俺は再び三味線をかき鳴らし、都々逸を歌い始めた。とにかくこの時代で一暴れして、波乱に満ちた人生を満喫するのだ。江戸幕府を倒した革命児、高杉晋作として。
年が明けて、元治元年1月、情勢を見極めた俺はついに武力決起を決意した。兵を起こして藩政を攘夷派のもとに取り戻すためだ。当初、そんな俺の号令に同調したのは、伊藤俊輔が率いる部隊を含めわずか80名ばかりの兵士たちしかなかった。対する恭順派が動かせる兵は2000名、数の上では到底勝ち目のある戦いではない。だが、俺には勝算があった。もともと藩内のものたちは幕府に対する反抗心が根強く、心情的にも攘夷派が多数を占めている。何か効果的な一押しさえあれば、多数のものがこの決起に賛同するはずなのだ。そして、その一押しのために、俺が恭順派の部隊が動き出す前に長州藩にとって重要拠点だった下関の新地会所を素早く制圧し、さらに藩の海の玄関口ともいえる三田尻の海軍局に参加を収めた。すると、経済の要所と海軍の拠点を抑える快進撃は俺の狙え通りそれまで様子をうかがっていた部隊を次々と決起軍に合流させる結果となった。やがて、3000にふくりあがった兵を率いた俺は恭順派の兵と直接対決し、ついにこれに勝利したのだった。それは決起からわずか一つ月の間の出来事だった。
革命家
“哎呀,不愧是高杉先生,真想给你们看看高杉先生演说的时候,那些家伙的表情呀。”
交涉结束的那天晚上,我们来到了常去的那家青楼,伊藤俊辅向关系很好的藩士们,称赞我不向对方的要求屈服的胆魄。实际上,交涉大获成功。成为悬案的赔偿金的支付,因为幕府曾经发出的驱逐外国船只的指示,而得以使长州免于赔偿,将问题转移给幕府政府。对于长州藩来说,没有任何实际的损害。
“但是,问题还是堆积如山啊。”
同席的井上门太面露愁容地说道。确实如门太所说的,和四国同盟军的交涉虽然成功了,但长州藩仍然处于危机之中。除了被诸外国军队打败以外,还有因为在京都发生的过激的攘夷活动,而导致支持长州藩的公家们被赶出政府,众多志士被杀。另外,因为幕府领导的长州征伐中,久坂玄瑞等能臣志士战死,藩内的大权从攘夷派手中,转移到了提倡顺从幕府的恭顺派手中了。
“首先有必要将藩政从恭顺派手中夺回,让攘夷派重新掌权,如果这一点不能成功的话,让长州藩再次成为倒幕运动的重新很难吧。”
“话是这么说,到首先还是要让藩主大人下定决心才行啊。”
门太也赞同着俊辅的话,两个年轻人顿时开始了讨论。在一旁悠闲地弹着三味线的我,看到他们这个样子,忍不出叹了口气。
“哎呀,又要开始了。”
这些长州的年轻人,因为一件事便开始了激烈的讨论。恐怕他们是真心思考着这个国家的将来,忧心着现状吧。实际上,他们这种能因为什么变得专注热情的姿态,在我这个看什么都无聊的人眼中,是那么的耀眼。但是,现在可不是纸上谈兵的时候。
“真无聊啊。”
我停下弹拨三味线,说道。听到我的话,俊辅他们都吃惊的喊道。
“别这么说啊,晋作先生。无聊是指什么意思啊。”
“没什么意思,不要管这些条条框框的理论了。攘夷也好,开国也好,你们不能被自己心中的想法栓死。反正人生只有一次,把这些束缚都扔掉吧。”
让我来说的话,现在是实践重于理论的时代。并不是每一个行动,都需要理论来证明。也许是因为,我的目的只不过是想要过的有趣刺激,因此他们那些崇高的理念,决心,在我听来完全没有一点意义。
“好啦,最重要的是要享受人生。这样才能燃起心中炙热的火焰。除此以外什么都不需要了。”
说完,我冷眼看着那些一脸不解表情的志士们,再次弹起了三味线,唱起了都都逸。总之我要在这个时代大闹一场,作为打倒江户幕府的革命家,高杉晋作,好好享受一下波澜万丈的人生。
转年,元治元年1月,看清局势的我决定发动武装起义。这时为了举兵将藩政夺回攘夷派的手中。但是,听从我的号令的,只有伊藤俊辅率领的部队中的八十名士兵。与此相对的,恭顺派的兵力则有两千名,从数量上来看,我们是没有胜算的。但是,我觉另有计划,原本藩内的人士就对幕府有很强的反抗心理,在他们心里攘夷派还是占多数的。只要有一个有效的助力推他们一把,就能够让多数人同意起义。因此,为了这个目的,我在恭顺派的军队行动之前,迅速占领了长州藩的重要据点,下关的新地会所,同时,还说服了被誉为长州藩的海上大门的三田尻的海军局参加起义。于是,因为我同时占领了经济要害和海上据点,我的快速围攻,不久就引来了之前一直窥视局面的部队的加入。不久之后,我带领着增加到三千兵力的起义军,同恭顺派的士兵开始了直接对决,并最终赢得了胜利。这时,距离起义开始仅过了一个月。
8.時の散歩者
「次はいよいよ幕府との戦ですね」
恭順派の手から萩を奪還してから数日後、俺はいつもの妓楼の二階で伊藤俊輔と酒を飲みながら今後の情勢について語り合っていた。
「あ、この動きを幕府がほっておくはずがない。」
いずれ幕府が長州へ攻め寄せてくるのは日をみるより明らかだった。そのまえにできる限りの準備を整えておく必要がある。
「さて、どうしたもんかな」
俊輔が帰った後も、俺は一人で三味線を鳴らしながら、来るべき幕府との戦いに向け策を考えていた。日本を支配する幕府にわずか37万ごくの長州藩だけでどう打ち勝つか。俺としては、なんともわくわくしてくる状況だ。と、障子戸の向こうに人の気配を感じ、三味線を弾く手を止める。
「誰だ」
するとふすまが音もなく開き、一人の老人が姿を現した。黒いコートに黒い帽子、それは萩の町で目撃した、あの黒衣の老人だった。
「あんたは、何のようだ。いや、それより何者なんだ」
そう言ってにやりと笑う俺に、老人は重々しい口調で答えた。自分は時の散歩者。時を旅するものなのだと。
「過去と未来、あらゆる時代あらゆる場所を旅してきた、しかし時より移動の際に起こる時空の波に精神を同調させ、巻き込まれるものが現れる。今回のお前さんのようにな」
「え、そいつはびっくりだ」
そういって驚いたふりをみせるものの、老人の話の中身は俺にとってそれほど重要ではなかった。老人の正体が何であれ、俺はすでにこの時代で生きることに決めていたからだ。そして、元の時代へ戻るのだという老人の誘いにも、俺は首を横に振った。
「戻る?冗談だろう」
俺にとって、高杉晋作として生きることは、刺激に満ちた日々を約束してくれるものだ。そんな理想な生活を捨て、わざわざ退屈な現代へと戻るつもりなどあるはずがない。そんな俺に、老人は試すような眼差しを投げると、重々しく口を開いた。
「おまえさんも知っておろう、高杉晋作がどのような最後を遂げるのか」
確かに知っていた、史実どおりならば、晋作は幕府軍との戦闘が続くなか、結核を患い、それから一年も経たずになくなるはずだ。しかし、そんな言葉を鵜呑みにするつもりはなかった。未来なんぞいくらでも変えて見せる。俺は端からそう思っていたのだ。
「無駄じゃよ。歴史は変えられん」
俺の心を見透かしたように老人は言葉を続けた。
「未来から来た人間にとって、過去は夢のようなもの。夢を見ることができても、夢をコントロールすることはできぬのだ」
俺がどう行動しようが意味などない、多少経過が異なるだけで、最終的な歴史の事実は決して変えることはできない。そう語る老人はうそをついているようには思えなかった。だが数年しか生きられないという宣告よりも、自分の行動が歴史をなぞるなぞっているに過ぎないという言葉に俺は強い反発心を覚えていた。
「なるほど、あんたの言うとおりだとしよう、だが、それなら尚のこと戻るつもりはないね」
そう語ると不敵な笑みを浮かべて見せる。これまでずっと、俺は何かに縛られ、他人の手によって敷かれたレールに乗って生きることを拒絶してきた。それが俺の生き方なのだ。その生き方を変えることなど、ありえない。
「俺は歴史を変えて見せる。絶対にだ」
「よかろう。それがおまえさんの選択なら」
そういい残すと障子戸が再び音もなく閉じ、老人は俺の前から姿を消した。
「いいさ、こうなったからには徹底的にやるまでだ」
俺は決意を胸に三味線の弦を一際強くはじいた。
「何かありましたか、先ほどから話し声が聞こえいましたけど」
その音に驚いたのか、奥のふすまが開き、馴染みの芸者のおうのが顔を見せる。
「いや、なんでもない」
そういうと、俺は窓の外から見える夜の闇へと視線を投げた、どんな手を使っても、歴史を変えてみせるという決意を胸にして。
时光的散步者
“接下来终于要和幕府决战了。”
从恭顺派那里夺回萩的几天后,我在经常去的青楼二楼上,一边喝伊藤俊辅喝酒,一边谈论起了今后的形势。
“是啊,这种状况幕府不会放着不管的。”
幕府早晚会攻打长州,这是再明显不过的事了。因此,在那之前,有尽可能做好准备。
“要怎么做才好呢。”
俊辅回去之后,我一个人一边弹着三味线,一边思考着同幕府一战,应该运用什么策略。仅有三十七万人的长州藩,想要对抗支配着整个日本的幕府,怎样才能取胜呢。对我来说,这是多么让人兴奋的状况啊。忽然,我感觉到拉门外有人,便停下了拨动三味线的手。
“谁?”
这时,拉门毫无声响的打开了,一个老人出现在我面前。黑色的外套,黑色的帽子,他就是在萩的街道上看到的那个黑衣老人。
“你有什么事!不,该问你是谁吧。”
我这么说着,冲老人笑了笑。老人则严肃的开口说道。自己是时光的散步者,是在时光中旅行的人。
“从过去到未来,我穿梭于所有的时代,所有的地方。但是,有时有的人会因为移动的时候引发的时空波浪,导致精神一体化,而被卷入其中,就像你这次这样。”
“诶,这还真是不可思议啊。”
我边说着,边做出了吃惊的样子。但是,老人所说的话对我来说并不重要。不管这个老人是什么人,我都已经决定在这个时代生活下去了。因此,面对老人想要带我回到原来时代的邀请,我只是摇了摇头。
“回去,开什么玩笑。”
对我来说,成为高杉晋作,可以保证我每天的生活都充满刺激。我根本不想放弃这种理想的生活,而活到无聊的现代去。老人用试探的眼光看着我,肃然地说道。
“你应该也知道吧,高杉晋作最后的命运是怎样的。”
我确实知道。根据史实记载,晋作在和幕府军的战斗中,患上了肺结核,不到一年便去世了。但是我没打算相信这些。我可以改变未来。我从一开始就这么打算。
“没有用的,历史是无法改变的。”
老人仿佛看穿了我的想法一般,继续说道。
“对于来自未来的人来说,过去就像是一场梦,虽然可以旁观,却无法控制。”
不管我怎么做,都没有任何意义,最多也就是经过有些许不同,最终的历史事实是无法改变的。老人说的这些不像是谎话。但是,比起听到自己只能再活几年的宣告,我的行动只不过是重新描绘历史的轨迹这些话,更是引起了我强烈的抵触情绪。
“原来如此,就算你说的是真的吧,但是,我还是不打算回去。”
说完,我露出了一个无所畏惧的笑容。在此之前,我一直拒绝被束缚着,拒绝沿着他人铺好的轨道生活,这就是我的生活方式。是不可能改变的。
“我一定会改变历史的。”
“好吧,如果这就是你的选择的话。”
老人说完这些话之后,拉门又悄无声息的关上了。老人的身影就这样从我面前消失了。
“好吧,既然如此的话,就干个彻底吧。”
我下定了决心,用力弹拨了一下三味线的弦。
“出了什么事吗,从刚刚开始,我就一直能听到说话的声音。”
也许是被我吓到了吧,里面的拉门突然打开,熟悉的艺人鹈野探出头来。
“什么事都没有。”
我一边说着,一边望向窗外,将目光头像了夜晚的黑暗之中。我下定决心,不管使用什么手段,都要改变历史。
9.歴史への挑戦
「お願いです、晋作さん。もう一度藩政に戻ってください。今がどのような時か、あなたが一番ご存知ではありませんか」
数ヶ月後、俺は下関の宿で伊藤俊輔に詰め寄られていた。俊輔が述べるとおり、世の中では幕府による二回目の長州征伐の気運が高まり、長州も対決にすまえて、全土を挙げて、臨戦態勢に入っている状態だった。
「桂さんが、薩摩との同盟を結んでくれたおかげで、武器に関しては最新のものが揃いつつあります。ですが、それだけでは戦には勝てない。私たちにははやり晋作さんの力が必要なんですよ。」
こちらをまっすぐに見つめ、問い掛ける俊輔の瞳には、真摯な願いが宿っていた。恭順派との戦いの時には圧倒的に不利の状況にありながら、俺を信じて付き従ってくれた俊輔。その言葉に思わず心を動かされる。だが、情に流されるつもりはなかった。黒衣の老人と出会ってから、俺は馴染みの妓楼に入り浸り、ただただ酒を飲み、三味線を弾く毎日を送っていた。史実において、幕府軍を破った立役者である、高杉晋作が何もしなければ、長州藩は幕府軍に破れ、歴史は改変される。そう考えてることだ。もっとも最初からそう考えていたわけではない。何もせずに待つなどというのは、もともと俺の性分ではなかったし、当初は藩の要人の地位を捨て去り、海外に渡ろうとしたり、おうのをつれてあてもなく四国を旅したりと、突拍子もない行動に取ることで、歴史を変えようと心見てみたんだ。しかし、そこからは何の結果も得られなかった。
「分かりません。私には晋作さんが何を考えているのか。なぜこの時になって。もしや何か深いお考えがあるのですか。幕府を打ち破る秘策があって」
必死の形相を訴える俊輔に、俺は違うと首を横に振って見せた。
「俊輔、そもそも俺は壊すのは得意だが、何かを作り上げることは苦手なんだ。」
それだけ告げると、俺は俊輔に帰るように促した。いままで夢見てきたのとは反対に、長州藩が幕府軍に破れることを願うのは本意ではなかったし、当然俊輔たちには申し訳ないという思いもある。だが、すべては俺の行き方を貫くためだ。この時代で生きると決めたのも俺が生きたいように生きられるのを感じたからだし、いまさら、それをまぎることなどできない。
「そうですか。残念です」
だが、うな垂れて帰る俊輔の背中を見送りながら、俺は自分の胸中になにやら気持ちの悪いものを感じていた。
向历史挑战
“求求您了,晋作先生,请再次掌管藩政吧。您应该最清楚现在是什么时候啊。”
几个月之后,我在下关的旅馆里,遭到了伊藤俊辅的质问。就像俊辅所说的,现在幕府发动的第二次长州征伐的势头正劲,长州为对决做好准备,举国上下都进入了临战状态。
“多亏了桂先生让我们和萨摩结成了同盟,因此我们能得到最新式的武器,但是,只有这样我们还是没有胜算,我们还是需要晋作先生您的帮助啊。”
俊辅直视着我的眼神中,包含着真挚的期待。俊辅在同恭顺派一战时,处于绝对不利的状况下,仍然相信我听从我的之后,他的话触动了我的内心。但是,我不能屈服于感情。见过黑衣老人之后,我便每天泡在常去的青楼中,每天每天除了喝酒就是弹三味线。史实中,打败幕府军的重要任务高杉晋作,如果什么都不干的话,长州藩便会输给幕府军,历史会因此改变。我是这么打算的。虽然,这并不是我最初的计划。什么都不做只是等待并不符合我的性格。最开始我打算放弃藩内要人的地位跑去海外,或者带着鹈野漫无目的的到处流浪,我本想尝试通过这种反常的行动来改变历史。但是,却没有得到任何结果。
“我还是不明白。晋作先生您到底在想些什么,为什么要在这种关键时刻。难道说您有什么更深层的考虑吗,有打败幕府的秘密策略?”
面对着俊辅拼命的追问,我摇了摇头告诉他并非如此。
“俊辅,我本来就只擅长破坏,对于创立什么就不擅长了。”
说完这些,我便催促俊辅快点回去。和我之前的梦想相反,长州藩被幕府军打败并非我的本意。当然,对于俊辅等人我也抱有歉意。但是,这一切全都是为了贯彻我的生活方式。我决心在这个时代生活下去,也是因为我感觉到,在这里我可以随心所欲的生活,这一点是无法改变的。
“这样啊,那太遗憾了。”
但是,目送着俊辅垂头丧气离开的背影,在我心中却有一股莫名不安的感觉。
10.長州征伐
幕府軍が長州征伐の号令を出したと知ったのはそれから一ヶ月後のことだった。いつものようにおうのと下関の妓楼を紅屋の二階で酒を飲んでいると、火急の用件と駆け込んできた知己の藩士のひとりが大事になったと告げたのだ。
幕府は切れ者と名高い老中、小笠原長行に全軍の指揮を任せ、およそ15万人にのぼる諸藩の兵が四方から長州に向けて進軍中だという。
いよいよか、ついにその時が来た。一瞬そんな思いが浮かんだ。だが、すぐに俺は自分には関係のないことだと打ち消し、そのまま藩士を帰らせてしまった。
「よろしいのでしょうか。このようなことをしていて」
何事もなかったかのように三味線をかき鳴らし、酒を飲む俺を見て、おうのが心配そうに言った。
「このようなこととはなんだ。俺はおまえと酒を飲めてとても楽しいぞ」
三千世界の鴉を殺し、お主と朝寝がしてみたい。そう都都逸のくだりを口にすると、三味線をかき鳴らし、おどけたように歌ってみせる。そんな俺に対して、おうのはなにやら言いにくそうに晋作さんは変わった気がすると口にした。以前と比べ覇気がなく、何をしていても面白くなさそうだと。
「そんなことはない、なにより今も昔も俺は俺だ。変わったりなどするものか」
そうむきになって否定してはみたものの、俺は内心おうのの鋭さを舌をまいていた。確かに最近の俺は何をしても面白く感じないのだ。この時代に来る前のように。実際、こうやって酒を飲んで、派手に騒いでいても、どこかしこりが残っているように感じてしまう始末だ。
「なぜもっと喜べない。これで俺はあの老人に一泡吹かせてやれるというのに。」
長州藩を率いて、江戸幕府を打ち勝つよりも、目に見えぬ歴史の歯車に挑むほうが遥かに刺激的な挑戦のはずだった。だがそれが達成されようとしても、今の俺はまるでわくわくしていないのだ。
「おうの、もっと人を呼べ!派手に騒ぐぞ!」
おうのに店の者を集めるように告げると、俺はさらに声高々と都都逸を歌い始めた。とにかく忘れたかった。この理由の分からない苛立ちを。
长州征伐
我得知幕府军发出长州征伐的号令是在一个月之后。我和往常一样在下关的青楼二层喝酒,一名熟知的藩士跑进来,告诉我出大事了。
幕府派了非常能干的老中小笠原长行指挥全军,约15万的诸藩兵力正从四面八方向长州进军。
终于开始了吗。这个时刻终于到来了。一瞬间我这样想到。但是,我却立刻说道,这已经和我没有关系了,就这样打发那个藩士回去了。
“真的没关系吗,做这种事情。”
看着我若无其事的弹着三味线,喝着酒,鹈野担心的问道。
“这种事情是什么意思。能和你喝酒我可是非常高兴啊。”
三千世界鸦杀尽,与君共寝至天明。我一边哼唱着都都逸的曲调,一边弹拨着三味线,半开玩笑的唱了起来。面对我这样的态度,鹈野有些欲言又止,最后只是说道,晋作先生你变了呢。她说我和以前比起来,失去了霸气,无论做什么都不开心。
“没有那回事。不管是现在还是过去,我就是我。怎么会变呢。”
我认真地否定道,但是在我的内心深处,却惊叹于鹈野的敏锐直觉。我最近确实不管做什么都提不起兴致。就像我来到这个时代之前一样。实际上,就算像现在这样喝着酒,疯狂嬉闹着,也总觉着心理有个结。
“为什么还是不开心。这样下去,我就能让那个大吃一惊了。”
和带领长州打败江户幕府比起来,挑战看不见的历史齿轮要刺激得多。但是,就算我达成了自己的希望,我却一点都感觉不到兴奋。
“鹈野,多叫点人来,好好热闹热闹。”
我让鹈野多叫些店里的人过来,然后便开始高声唱起了都都逸。总是,我想要忘记。我想要忘记这莫名的烦躁。
11.心のままに
伊藤俊輔が再び俺のもとを訪ねてきたのはそれから数日後のことだった。すぐに済むという申し出に屋敷の門の前で出迎えると俊輔は軍服に身を固め、馬を引いた姿で現れた。明らかにこれから前線へと向かう出で立ちだ。
「何の用だ。力を貸せということなら、答えは前と同じだぞ」
「いいえ、出陣の前に、晋作さんに一つだけ伝えたいことがありまして」
「伝えたいこと?」
「ええ、覚えていらっしゃいますか、あなたが口になさったことを」
そういうと俊輔は欧米四カ国との講和条約を取りまとめた日の夜を思い出すように告げた。
「あの時、あなたは自分の中だけの考えに縛られず、己の思いを解き放ってとおっしゃっていた。ですが今の私にはあなたのほうが思いを閉じ込め、己を縛っているように見えます。ただ、それだけを伝えたかった」
そういうと、俊輔は一礼とともに馬に乗り、俺に背を向けた。
「俺が己自身を縛っている」
去っていく俊輔の背を見ながら、俺の心にその言葉が浮かんでは消える。俺が自分の作ったルールに縛られいるというのだろうか。そんなはずない。そう言い聞かせながらも俺はその疑問を捨て切れなかった。自分はどう生きたいのか。どう生きるべきなのか。いつの間にか、俺はそんな問いを、己の胸に投げかけていた。やがて一つの答えが浮かび上がってくる。そう、答えはとても単純だった。
そうだ、世の中を面白くするのは自分の心だ。勝ち負けなんでのことは関係ない。ただ、自分自身の心が欲するまま、感じるままに行動すればいいのだ。そうすれば、どんな時も後悔などするはずがない。それこそが何にも縛られない生き方だ。
「俺はずっとそうやって生きてきたはずだ」
そう呟くと、俺は俊輔の後を追って走り出していた。彼とともに戦へと赴くために。
そして、慶応2年6月12日の夜半、ついに幕府軍との戦端が開かれた。
「突入せよ!」
夜陰に乗じて大島を占領した幕府の艦隊に近づくと、俺は長州の軍艦丙寅丸を全速力で敵艦の間に突撃させた。同時にすべての砲門を開き、ひたすら射撃を続けさせる。予期せぬこの攻撃に混乱した幕府の艦隊は闇夜のため小型の丙寅丸の姿を捉えられず、たちまち味方同士の船で大砲を打ち合う結果になってしまった。そして、ようやく幕府側の艦船の蒸気機関が動き出したころには、俺はずでに丙寅丸を戦場から離脱させていた。この奇襲攻撃に動揺した幕府の艦隊はせっかく占領した大島を捨て、長州藩の海域から遠く去ったのだった。こうして、幕府軍との初戦が見事長州軍の勝利に終わった。だが、勝利に沸き立つ中、俺は己の命が終わりに近づいているのを悟っていた。
戦闘を指揮している最中に吐血したのだ。それは高杉晋作の命を奪った病、結核が俺の体を蝕んでいる証拠だった。
随心所欲
几天后,伊藤俊辅再次找到我。因为他说说几句话就好,我便来到房屋的门前迎接他。出现在我面前的俊辅,身穿军装,牵着马。这显然是准备奔赴前线的打扮。
“找我什么事?如果还是想让我帮忙的话,我的回答和先前一样。”
“不,只是在上战场前有句话想告诉晋作先生。”
“有句话想告诉我?”
“您还记得吗,您亲口说过的话。”
接着,俊辅提起了同欧美四国缔结和平条约那晚的事情。
“那个时候,您说不要被自己的想法束缚,要解放自己的思想。但是,在我看来,您才是被自己的想法困住,被自己束缚了。我只想说这个而已。”
说完,俊辅向我行了一礼,便乘上马背,离开了。
“我自己束缚着自己。”
我目送着俊辅的背影,这句话在我内心中不断闪现。我被自己的信条束缚住了吗?怎么可能。我这样告诉自己,但是这个疑问却始终困扰着我。我想要怎样的生活。我该过上怎样的生活。不知从什么时候开始,我这样扪心自问道。不久,我便发现了答案。是的,答案非常简单。
是啊,让这个世界变得有趣的是自己的心。和胜负无关,只不过要随心所欲,跟着感觉行动。只要能做到这些,不管什么时候都不会后悔。这才是不被束缚的生活方式。
“我本应该一直这样生活的。”
我这样对自己说完,便向俊辅离开的方向追了过去。我要和他共赴战场。
庆应2年6月12日深夜,和幕府军的战争终于拉开了序幕。
“进攻!”
我趁着夜色接近了已经占领了大岛的幕府舰队,然后便命令长州的军舰丙寅丸全速突击敌舰。同时,打开全部炮门,全力射击。幕府的舰队被这突如其来的攻击打乱了阵脚,一时间找不到小型军舰丙寅丸的行踪。不久,就变成了自己的军舰开炮攻击己方的混战。之后,等幕府舰队的蒸汽机关终于开始运作的时候,我已经让丙寅丸脱离战场了。被这次奇袭打昏了头的幕府舰队,放弃了好不容易才占领的大岛,离开了长州藩的海域。这样,长州藩与幕府军首战告捷。但是,在一片胜利的欢呼声中,我意识到我的生命已经接近终点了。
在指挥战斗的时候,我吐血了。这便是最后夺走了高杉晋作生命的肺结核,在侵蚀着我的身体的证据。
12.面白き人生
狭い庵の中を春の香りが吹きむけどこからともなく鶯の鳴き声が聞こえてくる。それとともに開け放たれた障子戸から風に乗って一枚の桜の花びらが舞い込み、俺の枕元に落ちた。
刀を売り、山を帰って住むか。寝床に横たわってまま庭先に咲く満開の桜を見守りながら俺は自分の仕事が終わったことを感じていた。
大島口での戦いから10ヶ月後、俺は下関郊外にある小さいな庵で病の床についていた。大島口に続き、小倉会場での戦いに勝利し、幕府側の重要拠点小倉城の攻略も果たしたものの、俺の体はもはや戦場に立っていられるものではなくなっていたのだ。だが、長州軍の勝利が続いたため、幕府の威信が揺らぎ始めた。そして、俺が抜けた後も長州は各地の戦いで勝利を収め、ついに幕府側から和睦の申し出を受けるまでにいたっていた。結果、
幕藩体制の崩壊は急激に加速し、昨今では将軍が朝廷へ政の返還を行うという噂まで流れているらしい。
「結局、すべては歴史通りに進んだってことか」
半身を起こすと俺は枕元に置かれた三味線に手を伸ばし、軽く弦を弾いた。だが、放たれた音はなんとも弱弱しいものだった。この痩せ衰えた体ではすでに三味線を弾く撥を持つ手にすら力が入らなかったのだ。
「やれやれ、この様じゃもう酒も飲めそうもないな」
俺の体を蝕む結核の進行は予想外に早く、もはや回復の見込みはないようだった。咳と吐血を繰り返し、布団に寝たきりで自由に動くこともままならぬ身だ。しかし、そんな体になっても、なぜか心は清清しかった。嘘ではない。僅か3年あまりだったが、十分に面白い人生だった。あの黒衣の老人には感謝してもいいくらいだ。
ふと、人の気配を感じて、俺は視線を庭先へと向けた。そこに立っていたのはあの老人だった。
「まだあんたに会えるとはな。こんな風になった俺でももとの時代に戻れるのか」
皮肉めいた言葉を吐いた俺に、老人は静かに告げた。
「戻る必要はなかろう。おまえは高杉晋作になるべくこの時代に来たのだから」
「俺が高杉晋作に。」
老人の言葉に自然と笑みが浮かび、気づくと俺は声を出して笑っていた。人の敷いたレールの上を走ることを嫌い続けた俺が、時代に望まれ、そのレールを走ったというわけか。そいつは面白い。真実かどうかはどうでもよかった。ただ、そう考えると、なんと愉快なことか。
「面白きこともなき世を面白く」
そう呟きながら、俺はゆっくりと目を閉じた。満面の笑みを浮かべて。
有趣的人生
在狭小的草庵中,吹来了春天的气息,到处都能听到黄莺的鸣叫声。同时,半开的拉门中,乘着风飞进了一片花瓣,刚好落在我枕边。
弃刀归隐山田吗。我躺在床上,看着庭院中满开的樱花,真切的感觉到一切都结束了。
大岛一役后的10个月,我来到下关郊外的草庵安心养病。大岛一役之后,在小仓战役中也取得胜利,成功攻下了幕府的重要据点小仓城。但是,我的身体却已经无法再指挥战斗了。但是,因为长州军的接连胜利,幕府的威信开始动摇。在我离开战场之后,长州仍然捷报连传,终于,幕府方面提出了讲和。此次战斗,加快了幕藩体制的崩溃,最近,甚至传出了将军即将将政权交还朝廷的传言。
“结果,一切都按照历史的轨迹发展啊。”
我半支起身子,伸手拿起了放在枕边的三味线,轻轻地拨动了一下琴弦。但是,弹出的声音却十分微弱。看来我这衰弱的身体,连弹三味线的力气都没有了。
“唉,这样子估计也喝不了酒了。”
侵蚀着我的身体的结核,发展的比我想象的要快,已经没有康复的希望了。在不断地咳嗽和吐血中,我已是卧床不起,不能随意行动了。但是,虽然身体这么衰弱,但是我的内心却十分情爽。这不是谎言。虽然只有短短的三年,却是一段十分精彩的人生。我甚至想要感谢那个黑衣老人了。
忽然,我感觉到院子中有人,便望了过去,站在那里的,正是那个老人。
“没想到还能再见到你,我现在这个样子,还能回到原来的时代吗?”
面对我略带讽刺的语调,老人静静地说道。
“没有回去的必要了吧。因为你就是应该成为高杉晋作才来到这个时代的。”
“我成为高杉晋作?”
听了老人的话,我忍不住笑了出来。我一直讨厌走别人铺好的道路,结果,却被时代选中,走上了这条早已注定的道路吗。
“真是有意思。”
无论是不是真的都无所谓了。但是,想到这里便觉得有趣。
“让无趣的世界变得有趣。”
我小声呢喃道,接着满面笑容的慢慢闭上了眼睛。